目覚し時計のTAKA



VOICE


雑 感:2003/11/22】

「日本の空にシラケ鳥が舞うとき」



<1> 「道路公団民営化」

恩知らずの構図ー





小泉とおれは、水と油の関係」と言い、「小泉とおれを合わせれば、世の中の全部をカバーできるんじゃねえかって、勝手に思ってるんです」としゃあしゃあと言ってのける男がいる。
それが、2001年4月26日の小泉内閣発足とともに官邸に乗り込み、官邸スタッフの布陣から対メディア対応まで一手に改造に乗り出した小泉純一郎首相の「懐(ふところ)刀」、飯島勲首相政務秘書官である。

飯島秘書官の「水と油の関係」、「世の中の全部をカバー」という表現から思い浮かぶのが、「世の中の」という言葉である。この言葉を使って上記の発言を言い換えれば、「小泉が世の中のを担当し、おれがを担当して、二人合わせれば世の中の全部をカバーできるんじゃねえだろうかって、勝手に思ってるんです」とでもなろうか。


この飯島氏が、その著書「代議士秘書」(講談社文庫)の中で、興味深いことを語っている。
『予算に関する流れをきちんと把握し、地元民からの要望をいかに具体的に国家予算に反映することができるかどうかが、政治家の腕の見せどころだ。したがって、この予算がらみの陳情に政治生命がかかっているといっても、あながちいいすぎではない。(204ページ)
『政治家は、日本国のこの予算編成システムを理解し、どこをどう押したら影響力を発揮できるかを、よくよく理解していることが必要である。それがいいとか悪いとか、そういうことは問題じゃない。もう、そういう仕組みになっているのである。それだけにいくら議員を4期、5期やったところで、与党経験がまったくなく、公園にブランコ一つつけられないというのは、永田町の番付でいうとまだ関取ではない、幕下の力士みたいなものなんです。』(205ページ)
さしづめ民主党の議員は幕下だ、とでも言いたいのであろうか?


小泉首相の「」を担当する男・飯島首相政務秘書官の名前が最近、突如、表舞台に登場した。
発端は10月5日、民主党、自由党合併大会に併せて設定された石原伸晃国交相による藤井治芳日本道路公団総裁(当時)更迭のための事情聴取であった。

石原国交相は12日のテレビ朝日番組などで、その時の事情聴取の中で藤井総裁が、道路建設や国有地の払い下げなどを巡る政治家の不正・疑惑に言及したことを明らかにした。
『総裁は誰かわかるような形で、5,6人の政治家のイニシャルを示した。公表を求めると総裁は、「そんなことをしたら死人が出る」と話した。』


週刊文春”が藤井総裁の独占告白と題するシリーズで問題を追求していたが、11月6日の「筑紫哲也NEWS23」で藤井氏のインタビューが放送されたのに続いて、7日(03:01)のアサヒ・コムが次のインタビュー記事を報じた。

『藤井氏は「解任は行政の中立性を脅かすものだ」として、「このままにしておくことはできない。訴訟を含めた今後の対応をいろいろな角度から検討している」と述べた。また、「改革についてかなり厳しい抵抗や壁がある。真綿で絞められるような圧力がある」と述べ、外部からの様々な介入の存在を明らかにした。
一昨年12月に公団が島根県の山陰自動車道の仏経山トンネル西工事を含む13件の工事の発注を延期したことに絡んで、青木参院自民党幹事長から「直接電話で怒られた」と話した。
さらに、月刊誌に藤井氏を批判する記事を書いた公団の片桐幸雄・前四国支社副支社長の人事に関して、飯島秘書官から電話があり、「”動かすな”と言われた」とも明らかにした。』


」の小泉首相に対し、世の中の「」を担当する飯島首相政務秘書官。「小泉とおれを合わせれば、世の中の全部をカバーできるんじゃねえかって、勝手に思ってるんです」としゃあしゃあと言ってのける男の、これが実態ではなかろうか?


なお”文芸春秋”11月号が「小泉王朝の研究」と題する総力特集を組んだが、その中のノンフィクション作家・佐野眞一氏による”「異形の秘書官」飯島勲の高笑い”と題する記事から、飯島秘書官の実態を知る上で補足となる次の文章を見ていただこう。

『ある政治評論家は言う。「今年の春頃、読売新聞が”小泉絶縁宣言”ともとれる社説を掲載したことがあります。そのとき、飯島は読売の官邸キャップを呼びつけ、”お前のところは脱税やっているくせに、あんな記事を出すとは何ごとだ”と恫喝したらしい。
この脱税問題は、しばらくして実際に報じられますが、社の記者が恫喝された渡邉恒雄社長が”飯島は許せない”と憤っているのを直接聴いてます。飯島と渡邉氏との軋轢は、その後、森前総理の仲介で手打ちがされた、と聞いてます。」』


2001年11月20日、飯島秘書官は東京都内の共同通信社で、全国の地方紙36社の論説委員を前に講演し、高支持率の続く小泉内閣の裏事情について次のように語った。

マンガ本、スポーツ紙、婦人雑誌の取材に、最優先で応じてきた。国民の70%は、政治面の記事をあまり読まない。そこにどう語りかけるか。小泉が自民党総裁選に初出馬した1995年秋から、長期的に考え、新聞以外の取材に積極的に応じてきた。
茶髪の若者たちら、政治にほど遠かった国民が、今の小泉を支えている。



11月3日に発表された日経新聞社による世論調査では、小泉内閣支持率は49%、「首相に相応しい人」では小泉首相が52%の支持率を未だに確保している。「政治面の記事をあまり読まない」70%の国民をターゲットにした飯島秘書官が率いる官邸「メディア戦略」による成果であろう。
官邸に乗り込んだ飯島氏は、閉鎖的記者クラブの象徴ともいえる「内閣記者会」に、事前通告なしに雑誌編集者・記者を招待し、さらに何とスポーツ紙記者を加盟させた。この結果、小泉首相は、連日スポーツ紙を賑わす初の政治家となった。


『「人脈は広い。官僚は言うに及ばず、マスコミや警察などにまで太いパイプを持っている。この幅広い人脈を介して飯島氏のところにはいろんな情報が集まってくるので、さらにいろんな人物たちが寄ってくる。特に飯島氏のマスコミ人脈は際立っている。それを何よりも如実に証明したのが、たかが一介の秘書が書いた永田町の内幕ものの文庫本について、挙って全国紙がPRまがいの記事を書いたことだ。(政治家のスキャンダルを売り物にする週刊誌の)若い編集者やフリーライターまで彼のもとに出入りしていて、政治家や官僚にとって致命傷になりかねない醜聞をいち早く入手できるパイプを持っているのが強みだ」と森派のある代議士秘書は言う。
(http://www.mail-journal.com/20010509.htm)

小泉首相は、政治経済に関心を持ち、新聞の政治経済面をよく読む3割の国民の支持など、眼中にないのではなかろうか。そのような国民は、小泉首相の「口先」改革を直ぐに見破ってしまう。たとえ彼らに何と言われようが、「政治に無関心な」残り7割の支持率を背景に3割の批判を押し潰して、強引に「小泉構造改革」を押し進めて行こうと目論むのが、「小泉戦略」ではないのか。

そして「小泉構造改革」とは、”自民党の自民党による自民党のための政治”の実現に他ならないのではないのか。「自民党をぶっ壊す」と絶叫して2年前の参院選を大勝した小泉首相は、今度の衆院選で何と言ったか?「自民党は改革政党に生まれ変わった」と絶叫した。(どこが!)と政治経済に関心のある国民は、心につぶやく。そのとき、
日本の空には、シラケ鳥が舞う。


「道路公団民営化」「郵政民営化」は、小泉”口先”改革の二本柱である。その「道路公団民営化」に、先の自民党総裁選における小泉/青木「究極の野合」連合成立により、不審の黒雲が湧き起こった。
遡って昨年6月21日は、「健保法改正案」と「防衛庁の情報公開請求者リスト問題」と自民党内部の派閥構想でボロボロになった小泉首相が、「道路関係四公団民営化推進委員会」のメンバーに猪瀬直樹氏を押し込んで生き返った潮目の時であった。それ以来、猪瀬氏がマスコミに流す発言の数々が、どれほど小泉”口先”改革に宣伝効果をもたらしたであろうか。

小泉/青木連合により不審の黒雲が湧き起こった猪瀬氏を、同氏が徹底的に敵視し追い落としを図ってきた藤井前総裁の「イニシャル」発言が直撃した。もし、その発言が真実なら・・・小泉首相の言う「道路公団民営化」とは、いったい何なんだろうということになる。
10月28日、道路公団民営化推進委員会は、国土交通省が来年の通常国会に提出する「道路公団民営化法案」に関して、概要が固まる前に同委員会に示すよう”道路関係四公団民営化推進委員会設置法第二条第二項”に基づき、小泉首相に初の勧告をした。これは、国交省が「政府・与党協議会で検討するのが先」との立場をとっているため、石原国交相を通じて対応を改善するよう小泉首相に「踏み絵」を突きつけたものである。

これに対して、小泉首相がどう反応したか?29日、小泉首相は佐賀市内で記者団に、「与党とも協議しながら、選挙が終われば法案の準備を進めていく」。福田官房長官に至っては、「良い具体案をまとめる。・・・検閲ですか?」と言う始末。猪瀬氏は、私が以前から言い続けてきたように、遂にピエロとなったのか?
11月4日、日経新聞朝刊3面が、次の報道を流した。
『(藤井前総裁の後任の)人選は、石原国交相首相官邸の指示を受けながら進めている。(省略)民間人の人選が不調に終わった場合、民営化までの「つなぎ役」として、国交省や財務省のOBを起用する可能性もある。ただし、この場合は、「改革が後退した」との批判は避けられない。』


「中曽根独占激白:すべてを話す」のタイトルに惹かれて11月7日の「夕刊フジ」を買った。5面に道路公団新総裁人事にまつわる、これぞ知りたいと思っていた内幕話が掲載されていた。事実かどうかは知らないが、驚愕の内容であった。しかし小泉首相の「本性」を知る私には、いかにもありそうな話であった。

『小泉内閣の首相補佐官に、道路関係四公団民営化推進委員会メンバーで作家の猪瀬直樹氏(56)を起用する案が急浮上している。解任された日本道路公団の藤井前総裁(67)の後任に、旧建設官僚で現首相補佐官の牧野徹氏(69)が最有力となったのを受けたウルトラC人事だが、後任総裁選びが難航した末の苦し紛れの感も否めない。』

遂に道路公団にも身内を送り込むのか、小泉純一郎。大蔵省出身で小泉内閣官房副長官補であった竹島一彦・公正取引委員会委員長、財務事務次官から日銀に送り込まれた超エリート官僚・武藤敏郎日銀副総裁に続いては、建設事務次官から都市基盤整備公団総裁を経てH13年9月から現役首相補佐官である牧野氏の日本道路公団総裁任命ですか・・・。まさに「官僚漬け」ですな。

そしてその後釜に、最近小泉首相に不審感を抱き始めた感のあるウルサ型の猪瀬氏をあてがい口封じをするというわけですか?こりゃあ、”迷”人事だ!
小泉首相は、「藤井氏は技官出身だが、牧野氏は事務官出身」と違いを強調しているようだが、私のホームページの読者の皆さんは、もう既に「すべては予定通り」で、道路公団内部の技術系(藤井前総裁)と事務系村瀬前副総裁・現総裁代行)の熾烈な抗争について勉強済みですね。もしもこの牧野新総裁人事が現実のものとなるならば、飯島秘書官に怒鳴られ脅され宥められしたという藤井前総裁の告発が、如何にも真実味を帯びてくるというものである。


道路公団民営化」一つとってみても、小泉公約にはこれだけの矛盾と欺瞞が内包されている。こんな小泉の口先絶叫だけのアジテイションに乗せられて衆院総選挙で小泉自民が圧勝していたなら、今頃は日本の空にシラケ鳥が舞っていたことであろう。


11月14日の各紙朝刊が、またも小泉流サプライズ人事を報じた。
TVカメラの前で13日、解任された日本道路公団の藤井前総裁の後任に元伊藤忠商事常務で現職参院議員の近藤剛氏(62)起用の人事を発表する小泉首相の口元には、例の傲慢な自己中の歪んだ笑いが浮かんでいた。
「コンドウって、どのコンドウさん?」と反応されたという近藤剛氏の<略歴>を、そのホームページから拾ってみた。
1941年東京生まれ。
1964年早稲田大学政経学部卒。
同年伊藤忠商事株式会社入社。
1987年伊藤忠アメリカ会社副社長兼ワシントン事務所長、1992年政治経済研究所長、1996年6月取締役、1998年4月常務取締役。
2000年12月末同社退職。
経済団体連合会「国際貢献・人材派遣部会」委員、経済同友会「外交・安全保障委員会」委員長、日本商工会議所「国際貿易政策研究会」座長、日米欧委員会委員、世界経済フォーラム(ダボス会議)国際問題委員などを歴任。
2001年7月の参院選に経済界代表として自民党比例代表に出馬し、初当選。

1998年の参院選では、「人材投入によって政治的影響力を保つ」と方針転換した経済界が東京電力副社長であった加納時男氏を自民党全国比例区に擁立し、参院議員を誕生させた。
2001年参院選においては、参院自民党と経済界とのパイプの強化を進めていた青木参院幹事長の候補者打診に対し、最終的に、政界や経済界に幅広い人脈を持つ瀬島龍三氏が挙げた伊藤忠商事で同氏の秘書を務めた近藤剛氏を推す形となった。しかし知名度不足もあって経済四団体が総力を挙げて支援し、漸く
経済界を代表する2人目の参院議員が誕生したという経緯があった。
「これまで経済界は数々の提言をしてきたが、政治が停滞して実行できなかった。景気の低迷も看過できない。総論賛成、各論反対ではダメ。ビジネスマン代表として政治に参画して、21世紀の国づくりに挑戦したい」ーーこれが参院選に臨んだ同氏の決意であった。


14日の日経新聞朝刊2面が、次のような裏話を報じた。
『「総裁は近藤さんにお願いしたいと思う」。13日午後3時。自民党の青木参院幹事長は行きつけの理髪店で、小泉首相から電話を受けた。2年前、近藤氏を参院選に擁立した青木氏は、「奥田さんは了解しているのか」とただした。経済界代表の顔を持つ近藤氏の身分を動かすにあたって、日本経団連奥田碩会長に根回ししたのかとの確認だ。「奥田さんも了解している」が首相の答えだった。
午後3時半。官邸で総裁就任を打診された近藤氏は、その足で青木事務所へ向かった。「奥田さんとは話していない」と語る近藤氏を、青木氏は「すぐに行きなさい」と諌めながらも、「お国のためにやりなさい。比例代表選出だから自民党が議席を失うわけでもない」と激励した。
だが、奥田氏は記者団に、「何も聞いていない。もっと慎重に決めてもらわないと困る」と不快感をにじませた。事実、奥田氏は青木氏に電話をかけて、「近藤さんで本当にいいんですか」と確認している。』


日本経済を支える国際企業トヨタの会長でもある経団連の奥田会長は、これまで陰に日に小泉首相を支援してきた人物である。その経団連を含めた経済四団体が、自分たちの意見を代弁してくれる2人目の国会議員として、総力を挙げて近藤氏を参議院に送り込んだ。
それは、議会制民主政治の政治力学においては、当然と見なされる行動であった。参院議員近藤氏誕生の背景には、選挙で票を投じた数多くの有権者の意思があったはずである。

近藤氏のホームページの挨拶文の中には、「この度小泉首相の強いご要請により、日本道路公団総裁に就任する運びとなりました」とある如く、小泉首相は近藤氏に、参院議員を辞職して日本道路公団の総裁になれと迫った。
上述の日経の記事を読むと、まさしくこれは田中真紀子前外相言うところの「蜘蛛の巣城」である。
「道路公団改革」を唱える小泉首相が、道路公団新総裁任命にあたって道路族のドン・青木氏に電話を掛けるは、経済界代表としてその総力支援で国会議員になった近藤氏が、任期途中で一言の断りもなく議員辞職の決定をしてしまうは、「奥田さんも了解している」と言った嘘吐き男がいて、「奥田さんとは話していない」と当の近藤氏が言い、奥田氏自身が「何も聞いていない」と言う。この奥田氏は、その嘘吐き男の民間における最大の支援者だったりする。
恩知らず 冷血自己中 恥知らず」がたむろする”蜘蛛の巣城”。

有権者の投票により選出された国会議員を、なぜ小泉首相が辞職させることができるのか?
辞職を受ける近藤参院議員も常識に欠けた人間だが、首相たる地位にありながら有権者の意思を無視して辞職を勧める小泉純一郎という男には、いつもながらに現行憲法の基本精神を平然と踏みにじる実に危険な政治屋との思いが強い。


非礼」な仕打ちを受けた日本経団連・奥田会長の不快感はおさまらない。
15日の日経朝刊5面よりーー

『奥田日本経団連会長は14日、「経済界あげて支援し、国政の場に送り出した人が、任期の途中で突然、議員を辞職することになったのは残念である」と異例のコメントを発表した。経団連内には、「近藤氏は経済界が自民党の要請を受けて担ぎ出し、選挙も皆で汗をかいた」(幹部)との思いがある。当時の今井敬経団連会長らが応援演説に歩き、全国各地の企業に支援を求めた。その近藤氏を、小泉首相が十分な根回しもなく引き抜いたとの反発があるようだ。近藤氏は13日夜、奥田氏に「改革を進めることが恩返しになると思う」と話した。経団連内に就任を歓迎するムードはほとんどない。』

近藤氏の「恩返しになる」のセリフは、興味深い。恩を仇で返した「恩知らず」と非難される先回りをしているつもりなのだろうか?党内に政権基盤が不安定だった小泉政権初期にいろいろ支援してもらった恩義を忘れて、中曽根元総理の面子を丸潰してパフォーマンス優先を貫いた小泉首相の「恩知らず」と、よう似てますなあ。


19日の日経朝刊7面が、奥田会長の不快感の出所の具体例を示す良い報道記事を流した。
奥田日本経団連会長は18日、参院議員だった近藤氏が日本道路公団総裁に就任することについて、「諸般の事情があるにせよ、このような事態になったことを心からおわびする」という異例のおわび状1604の会員企業・団体に送付した。「一昨年の参院選の際は、会員各位の絶大な支援を得て(近藤氏を)国政の場に送り出したが、任期途中に突然、議員を辞職することになったのは実に残念だ」としている。』

近藤氏自身がそのホームページの参院議員辞職にあたっての挨拶文の中で、「2年4ヶ月前の参議院議員選挙において皆様方の物心両面にわたるご支援により当選させて頂いて以来」云々の言葉を残している。
”週間文春”11月27日号には、より具体的な表現が見られた。

『別のある経団連関係者が驚くような事情を打ち明けた。「怒るのも当たり前です。前回の参院選のとき、経団連が全傘下企業の部長職以上に、”一口5万円献金しろ”と命じ、それで近藤を当選させたんです。経団連に属す大会社はほとんど、みんな人も金も出した。一つ間違えたら、大スキャンダルになるところだった。』

近藤氏自身が、「物心両面にわたるご支援」に言及しているわけだから、あり得る話と言えよう。ようもまあ、それだけ世話になった経済界に一言の相談もなく、議員を辞職できるもんだ。
この近藤氏は参院議員になった後、どういうルートからかあの山崎”エロ拓”派に所属し、山本一太参院議員らとグループを組み、「聖域なき構造改革」を主張する小泉首相に共鳴し政策提言などもしてきた、所謂「小泉チルドレン」に属するお方ということである。さすがに「非礼」な人物を支持するお方は、自分自身が「非礼」ということらしい。合掌。


近藤氏起用の人事を発表した小泉首相は13日夜、記者団に、「身近にいい人材はいるものですね」と得々と語り、「民間人が望ましいと言っていて、国会議員にしたのはなぜか」との問いにも、「なお望ましいですね。民間人、プラス国会議員。人間関係も練れている」と胸を張ったという。
一方、近藤氏は、「知識は利用者並み」、「国会議員という立場の知識しかない」と公言する如く、その道路行政に関する手腕は未知数。13日、記者団に公団改革に取り組む意欲を聞かれ、「まず道路公団の皆さんが一体となって改革に取り組んでいく雰囲気をつくり上げることが重要だ」と述べるにとどまった。

14日の日経朝刊1面には、道路公団の今後の動きが次のように報じられていた。

近藤氏は、2005年4月に道路公団が移行する予定の民営化会社の初代社長にもそのまま就任する予定。道路公団の村瀬興一副総裁らは退任し、役員陣は大幅に入れ替わる見通しだ。政府・与党は2005年度からの道路四公団の民営化に向けて、年内に民営化関連法案の骨格を固め、来年の通常国会に提出する方針だ。』


13日に道路公団新総裁内定にあたって記者団に「まず道路公団の皆さんが一体となって改革に取り組んでいく雰囲気をつくり上げることが重要だ」と抱負を語っていた近藤氏は、20日付で新総裁に正式就任した翌21日、片桐幸雄氏の元部下で藤井前総裁によって地方に「左遷」させられていた改革に積極的とされる課長代理2人と若手職員1人を、12月1日付で本社に復帰させる人事を決定したことを明らかにした。
さすがに小泉首相が、「人間関係も練れている」と太鼓判を押した人材だけのことはある。やることが早いわ。確かに「練れている」。練れ過ぎとチャウカ?


片桐氏については、21日の日経夕刊2面が、次の記事を伝えている。
石原国交相は21日、道路公団の”債務超過を示す財務諸表”の存在を告発し、地方に配転されている片桐四国支社調査役の処遇について、「内部で訴訟をし合う状態は解消し、組織としての体をなすのが一番だ。新総裁が判断されると思う」と述べた。』
片桐氏は、月刊誌に「幻の財務諸表」の存在を内部告発して、公団と藤井前総裁から名誉棄損などで訴えられており、近藤総裁が訴訟を取り下げれば、東京復帰の可能性も出てくるという。


22日の日経朝刊5面。
『日本道路公団の近藤総裁は21日、首相官邸に小泉首相を訪ね、「これから本格的な(公団改革の)作業に入る。全面的に協力、支援をお願いしたい」と就任の挨拶をした。首相は、「しっかり頑張って下さい。全面的に協力します」と激励した。近藤総裁は、政府・与党が年内に決める公団民営化の骨格案づくりについて、「民営化の主体である公団の意見を十分に取り入れてほしい」と要望。首相は、「当然のことだ」と応じた。近藤総裁は公団の理事ら幹部人事について、早急に人選したいとの考えも示した。』


遡って10月28日、道路公団民営化推進委員会が、「道路公団民営化法案」の概要が固まる前に同委員会に示すよう”道路関係四公団民営化推進委員会設置法第二条第二項”に基づく初の勧告という「踏み絵」を、小泉首相に突きつけた際の対応はどうであったか?
小泉首相は、「与党とも協議しながら、選挙が終われば法案の準備を進めていく」。福田官房長官に至っては、「良い具体案をまとめる。・・・検閲ですか?」と言う始末。

道路公団側に何の問題もなければ、どだい「道路公団民営化」などという話すら出てこなかったわけで、問題があるから「道路公団民営化推進委員会」を設置し、委員長に就任した今井敬・元日本経団連会長の顔に泥を塗ってまで猪瀬委員にデカイ面をさせてきたんだろうが。
その「道路公団民営化推進委員会」の法律に基づく「勧告」に対しては、木で鼻をくくるような、福田官房長官に至っては「検閲ですか」と言うような対応をしながら、その腐り切った道路公団の「民営化の主体である公団の意見を十分に取り入れてほしい」との要望には、「当然のことだ」とよ。

どこが「当然のこと」なんだ、小泉純一郎?腐った「日本道路公団」は、どこに行ったんだ?藤井前総裁の首を切って、小泉チルドレンの近藤氏を新総裁に任命し、藤井前総裁に冷や飯を食わされていた連中を生き返らせて、それで腐り切った「日本道路公団」がマネーロンダリングしたように真っ白けになるってか。
道路公団民営化推進委員会」の「勧告」を十分取り入れることこそ、「当然のこと」ではないのか?なぜ小泉首相がその時に、「当然のこと」だと返事できなかったのかを、日本国民は深く考える必要がある。いつまでも思考停止していると、止めどもなく国民の民度が低下していってしまう。最後には、「やがて哀しい日本」しかなくなってしまうであろう。


藤井前総裁の提起した所謂「イニシャル問題」について近藤新総裁は、「内部調査を行う」方針を明らかにした。しかし、「事情を知る公団内の理事らに事情を聞いて」とは語ったが、「藤井前総裁には事情を聞く考えはない」とも語った。結果は、火を見るよりも明らかであろう。
藤井前総裁が「道路公団の天皇」と言われた存在であったかどうかは別として、2001年12月に、小泉首相の道路公団への国費投入打ち切り宣言を受けて13件の高速道路工事発注中止を指示したのは、間違いなくその「天皇」藤井前総裁であった。
当時、公団のその発注中止に対して理解を示したのが、石原行政改革担当相(当時)であった。一方、この発注中止の中に地元島根県の高速道路が含まれていたことに激怒した青木参院自民党幹事長が、藤井氏を青木事務所出入り禁止としたことも周知の事実である。
さらに、その青木氏の激怒に震撼して「発注中止ではなく、財源のメドがつくまで延期しただけ」との認識を示し、近く発注中止が撤回されると示唆したのが安倍官房副長官(当時)であり、この安倍氏の発注中止撤回発言に対し、「道路公団が判断すればいいことだ」と例によってコズルイ逃げの発言をしたのが小泉首相であったことも、厳然たる事実である。
藤井氏のインタビューなどによる発言によれば、藤井前総裁の抵抗勢力を指揮していたのは、村瀬副総裁ということである。この村瀬氏は青木氏に近い存在で、官邸の飯島首相秘書官ともツーカーであるらしい。その飯島秘書官(イニシャル”I”)が、「文芸春秋」に内部告発した片桐四国支社副支社長(当時)を刑事告訴に踏み切ろうとした藤井前総裁に、「刑事告訴など、絶対に止めろ!」と恫喝電話をかけたらしい。



小泉首相に「踏み絵」を突きつけ、すげなく袖にされた「ピエロ」猪瀬直樹氏のメディア露出が極端に減っている。と思いきや、”週間文春”11月20日号に登場していた。文芸春秋社から470ページの書き下ろし「道路の権力」を発売したという。
読者の皆さんは、猪瀬氏と「道路公団」特に藤井前総裁について、どのように感じておられたであろうか?私の場合は、ともかく猪瀬氏は藤井嫌いで、小泉首相の「道路民営化」路線の忠実な支持者で宣伝マンとの印象であった。ところが・・・
同上の”週刊文春”の「猪瀬直樹が”道路の権力”で明かす民営化の攻防一千日」と題する記事の中に、次の文章があって驚いた。

(インタビュアー)日本道路公団総裁を解任された藤井氏悪役で、”文芸春秋”8月号「藤井総裁の嘘と専横を暴く」を書いて左遷された片桐・前四国支社副支社長正義の味方、というのも事実でないことがよくわかりました。へえ〜?!という感じです。
(猪瀬氏)どちらも同じ穴のムジナなんですね。国民の利益ではなく、道路公団の利益のみを考えている連中の内部抗争なんです。片桐氏からファミリー企業批判を耳にしたことがないでしょ。新聞記者も内部情報がほしいのでついつい片桐氏側のリークに振り回され、報道が混乱していたのです。』

オイオイ、今になってそれはないだろ。いままでお前の発言でどれだけ小泉首相の支持率が維持されてきたか、計り知れないものがあるだろう。お前が藤井前総裁を悪役に仕立て上げて、その結果が近藤新総裁というわけだ。「イニシャル発言」を受けて、豹変するなよ。しょせんお前は、「ピエロ」作家の猪瀬なんだ。


こうしていま、何が起きているか?
青木参院幹事長が経済界から引っ張り出した近藤氏を、””を担当する飯島秘書官の親分である””の小泉首相が日本道路公団の新総裁に任命し、その近藤新総裁は、「まず道路公団の皆さんが一体となって改革に取り組んでいく雰囲気をつくり上げることが重要だ」と就任の抱負を語った舌の根も乾かぬ矢先に、藤井氏に左遷された若手社員の復帰辞令を決定して公団内の藤井色一掃に乗り出す構えを見せている。藤井色一掃とは、一見すれば、反藤井の背後にいる青木色に塗り替えられるように見えるが、現実は違うかもしれない。
就任挨拶に官邸に出向いた近藤新総裁の「これから本格的な(公団改革の)作業に入る。全面的に協力、支援をお願いしたい」との就任挨拶に、「しっかり頑張って下さい。全面的に協力します」と激励した小泉首相の腹の内は如何ばかりであったことであろうか。

かくて小泉純一郎は、「日本道路公団」を手の内に入れた。そのことを、国民のどれだけが知っているのであろうか?小泉純一郎が手に入れたものは、単に「日本道路公団」だけではない。この道路公団民営化問題がこじれた暁(あかつき)には、使い古しの「ぼろ雑巾」のように責任だけおっかぶせて切り捨て支持率の急減をカバーする近藤新総裁という「スケープゴート」も、同時に手に入れたのだ。


衆院総選挙では、無党派層の一部が民主党支持に回り、日本の空にシラケ鳥は舞わなかった。しかし、総選挙が終わってみれば、また公明党に支えられた小泉自民党の天下が続く。絶対安定多数を確保した与党は、従来にも増して強引な国会運営を仕掛けてくるであろう。
総選挙中に、この絶好の「イニシャル問題」に踏み込まず、「高速道路無料化」をマニフェストとして論戦を挑んだ挙句、小泉首相に「選挙目当てでタダにすれば国民は喜ぶ、そういうバカな国民ばかりではない。余りに有権者を愚弄している」と、「高速道路無料化」に理解ある民主党支持の有権者が「バカ」呼ばわりをされたにもかかわらず、何一つ反論らしきものをしなかった。
この民主党は、単独過半数を頼りに強引な国会運営を仕掛けてくる自民党に対して、相変わらず今後も「数の論理」を信奉して「何でも素通り国会」を続けるつもりなのであろうか?もしそうなら、そのときは・・・
日本の空に、シラケ鳥が舞うことだろう!
(2003/11/22)


TOP
MENU
Message Board

MAIL TO: taka@taka-watch.com