コレダケハイワセテ!
Today's 目覚まし Shot
【2003/9/6】
「改革」持ってこい!
ー2003年8月22日付日経新聞1面よりー
コラム「核心」9月スタート 世の中の動きを斬新な視点で解き明かすコラム「核心」を、9月1日(月)にスタートします。
日本経済新聞社はコラムニスト制度を新設し、田勢康弘と西岡幸一を充てます。この二人を中心に執筆、政治や経済、産業をはじめ社会が転換期を迎えた中で、これまでの常識を問い直し、時代の核心に迫ります。
インタビュー「領空侵犯」も始まります。角界の著名人に、専門外の分野について外の立場だからこそ気付く問題点やあるべき姿を語ってもらいます。
いずれも月曜日付に設ける「オピニオン」面に掲載します。ご期待ください。
こうして新設「コラムニスト制度」に基づく、新コラム「核心」がスタートした。
田勢康弘氏は、日経新聞毎月曜朝刊(8月31日以降は毎日曜に変更)掲載の人気コラム「風見鶏」をホームグラウンドとする著名な同紙編集委員(現コラムニスト)である。当ホームページでは、小泉純一郎が内閣総理大臣に指名された2001年4月26日直後の30日に同コラムに掲載された「高杉晋作と小泉首相」以来、格別に同氏の記事を俎上に取り上げてきたので、当HPをご愛読の読者の方々にはお馴染みの人物であろう。
西岡幸一氏は、毎日曜朝刊企業面のコラム「経営の視点」のレギュラー・メンバーで、経済・産業分野を得意とする同じく日経新聞編集委員(現コラムニスト)である。当ホームページでは、2002年3月10日に同コラムに掲載された「破壊こそ再生への近道」と題する記事を取り上げたのが唯一であったが、同氏に強い印象を受けた私は、コメントを次の文章で締めくくった。
『この西岡記者、面白〜い!
何一つ解決せず、自分の解決能力の欠如を覆い隠すために、次々と問題を引き起こしては複雑化していく「疲れる男」小泉純一郎。
そのおかげでコリカタマッタ頭の芯を凝りほぐしてくれるような、上質のユーモアと鋭い示唆を併せ持った日経新聞編集委員西岡記者の今後の記事に、大いに期待したい。』
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9月1日月曜日。日経新聞朝刊5面、”「小泉純一郎」とは何か”と題する本社コラムニスト・田勢康弘氏の記事で、新コラム「核心」はスタートした。
| 1944年生まれ。69年早大卒、日本経済新聞社入社。 ワシントン支局長、政治部次長、論説副主幹などを経て現職。 ハーバード大学国際問題研究所フェロー。 96年度日本記者クラブ賞受賞。 |
小泉純一郎と田勢記者の付き合いは、小泉が第87代内閣総理大臣に指名される以前、自民党内の単なる「変人」でしかなかった時期に遡る。党内で大した力を持たない一匹狼の「変人」であった当時、小泉に関心を持つ新聞記者などほとんどなかったであろう。
田勢記者の「高杉晋作と小泉首相」には、たまに会うとき両人は、「政治の話などせず音楽や映画の話をする」という記述が出てくるが、どうも政治家と政治記者という肩書の付き合いというよりは、趣味や気心の合う友人に近い関係であったようである。
その友人に近い「変人」小泉純一郎が、晴天のヘキレキの如くに自民党総裁に選出され、内閣総理大臣になってしまった。
その驚きが、小泉内閣発足4日後の「風見鶏」に掲載された田勢氏の「高杉晋作と小泉首相」と題するコメントに生々しく現われていると、私には感じられる。
こんにち思い起こせば、記事を書いた田勢記者にとっても、書かれた小泉純一郎にとっても、記事を読む読者にとっても、実にエポックメイキングなコメントであったと思う。
この記事をとっぱしに田勢氏はコラム「風見鶏」に、その後1年半以上に渡って月一の割合で、小泉支援の記事を書き続けることとなる。
「高杉晋作と小泉首相」に続く同年6月4日の「”天辺の月”と小泉首相」までは、田勢氏は未だジャーナリストであった。しかしその後の記事は、どういうわけか月を追って内容のない所謂「提灯」記事に堕落していった。
2002年5月6日、田勢氏はコラム「風見鶏」に、「後より晴るる 野路の村雨」と題する記事を送り出した。
私は同日、タイトルを「”日経新聞”と田勢記者」−自虐的元ジャーナリストの話ーとしてホームページにアップした。その中から抜粋。・・・
『最近、日経新聞がつまらない。
読むに値する記事が、めっきり減ってしまった。
小泉首相が税制改革を言い出せば、突然降って湧いたように「社説」で税制改革の必要性を取り上げる。
(省略)
小泉首相にジャーナリスト魂を売って、この男の文は明らかに変質してしまった。
そこここに単純な「自己矛盾」や「短絡解釈」が目につく。
(省略)
田勢記者と日経新聞は、とてもよく似ている。
ともに小泉首相、小泉内閣の宣伝を好む。
最近の田勢記者と日経新聞の記事は、ともに読む前から内容が想像できてしまう。
提灯記事は、読むものにはつまらないものだ。』
2002年11月4日、コラム「風見鶏」に発表された田勢記者の「秘密主義政治の功罪」を境に、小泉首相に対する田勢記者の視点に変化が感じられた。理由はわからない。盲目の恋からフト現実に「目覚めた」心境であったかもしれない。
その後、今回に至るまで、私は同氏の記事を題材にホームページのコメントを書かなかった。記事から読み取れる田勢氏の心境の変化が、私にモティベイションを与えなくなってしまったのだ。
今回「核心」に発表された田勢記者のコメントは、さすがに新コラム第一回というところでいささか気負いも感じられるが、小泉首相に対する視線は、恋から「目覚めた」後の冷静さをキープしているようだ。
既出の「高杉晋作と小泉首相」の中には、ジャーナリストの鋭い目を持った田勢氏と、その後直ぐに小泉内閣宣伝相に落ちぶれて行く恋は盲目の目を持った田勢氏の二面性が窺える表現があって、興味が尽きない。
『(彼は)どこかテロリスト的ムードが漂う。テロリストは心を明かさない。』
『頑固な人だけに自説にこだわるあまり、国をあやまるようなことだけはしてほしくない。』
真のジャーナリストとはこういうものか!・・・私は、田勢記者の上述の短い二つの文章を読むたびに、感銘を受ける。
田勢記者と小泉純一郎は、政治記者と政治家にもかかわらず、「政治の話などせず音楽や映画の話をする」関係であった。その親しい小泉純一郎が、晴天のヘキレキで内閣総理大臣になってしまった。
その4日後に発表した記事の中で書かれたのが、上述の文章である。同日の日経新聞トップ記事は、80%に達する小泉内閣への「お化け支持率」であった。田勢記者は、当然それも知っている。
そのような状況の下で書かれた上述の二つの文章が、田勢記者の単なるジャーナリスト魂からのみ発露されたとは思わない。私は、「政治家」小泉純一郎の趣味、性癖、心根などをわりかし知る立場にあった田勢記者が、日本を舵取る新総理に選ばれ国民の80%の支持率を獲得している小泉純一郎に対して、心底でかなりの懸念を感じていた結果が、上記の文章になったと推量している。
それは、政治記者「田勢康弘」の心のジャーナリスト魂が、本人すら無意識のうちに発露して国民に向けて発せられた近未来への「警句」であったに違いないーーと、私は確信している。
小泉純一郎が田勢記者にとって身近過ぎる存在であったことにより、「ジャーナリスト」田勢記者の心に一片の影を落とす懸念が生じた一方で、あまりに身近過ぎる存在であったが故に、誤った印象を持ってしまった部分が生じたことも否めない事実であった。
というよりも、小泉純一郎の周囲に群がった人びとの中で、少なからぬ数の人びとが小泉純一郎に手のひらを返すように裏切られ傷ついて去っていったか考えた方がよい。
昨日5日の日経朝刊2面によれば、民主党枝野幸男政調会長が4日の記者会見で、『小泉首相は国民化自民党の抵抗勢力のどちらかをだましている。青木さんは「小泉さんに裏切られたことはない」と言っているのだから、裏で手を結んで国民をだまそうとしているのだろう』と、語ったそうだ。
田中真紀子前外相、道路公団民営化委員会委員長を務めた新日鉄会長の今井敬氏、個人情報保護法で見事に一杯食わされた作家の城山三郎氏などなど、少なからぬ人々が小泉の外面に騙され痛い目にあってきたのが現実である。
民主党枝野氏が指摘したように、国民がもっとも騙されて痛い目を被ってきたのだが、未だに「お目覚め」しないとは、まさにそれが国民性と言えようか。
「高杉晋作と小泉首相」の中で、田勢記者はこう書いている。
『(彼は)政治につきものの建前と本音の使い分けなどない。』
読者の皆さんは、すでに小泉純一郎に対する田勢記者のこの理解が誤りであることを、充分認識されているはずだ。
田勢記者もまた、小泉純一郎の身近にいながらその真実の姿を理解していなかった一人であったのだ。そこから、約1年半に渡る迷えるジャーナリスト田勢康弘の笑えぬ小泉「提灯」記事行脚が始まったのである。
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話が、「核心」から逸れてしまった。しかし、よく考えていただきたい。
9月1日、新コラムスタートの第一回を飾った”「小泉純一郎」とは何か”を書いた日経新聞コラムニスト・田勢康弘氏は、上記に取り上げた「高杉晋作と小泉首相」から「秘密主義政治の功罪」に至るまで小泉純一郎について書き記した田勢記者と当然のことながら同一人物である。
ということは、今回の記事”「小泉純一郎」とは何か”に書かれていることの背景には、同記者の過去のコメント内容の歴史があるということだ。
その過去の歴史に積み重ねる新たな記述も、もちろんあるだろう。日経新聞コラムニスト・田勢康弘記者が、いま小泉純一郎について何を考えているのか?さあ、「核心」に入ろう。
『「変人」と呼ばれ「自民党をぶっ壊す」と叫び、政治のあつれきをエネルギーにして2年4カ月。「小泉純一郎」とは何か。
首相に極めて近い部署にいる官僚や民間有識者にこの問いをぶつけてみた。聞いたのは10人ほどだが、全員が匿名を条件にした。自民党総裁に選ばれれば、さらに3年は首相の座に居続ける公算大である。自然と口が重くなるのも道理だ。』
首相側近である飯島勲・政務秘書官が統括する水も漏らさぬ官邸総合メディア戦略。
『首相に極めて近い部署にいる官僚や民間有識者が、全員匿名を条件にした』如く、『自然と口が重くなるのも道理だ』とこれに理解を示した田勢記者が、彼ら匿名者の下記のような刺激的なインタビュー内容を新聞紙上で公開してしまうという勇気ある姿勢に、私としては、盲目の恋から「目覚めた」同氏のジャーナリスト魂復活の手応えを感じるものである。
『「言いにくいことですが、5合枡には1升の酒は入らない、ということです。わかったのはそれだけ」。首相が極めて信頼していると思われる人物はこう言った。たぶん、リーダーとしての器の大きさに不満があるのだろう。』
「戦略家です。政策はよく理解しているとは思えないが、政局の勘はすごい。下を巻くようなことが何度もありました。」
「軸がまったくぶれていないように見える。というか、見せる。相当ぶれているんですが、ご自分で一貫していると言い続けるとそういうイメージになる。」
「政策の整合性が欠けている。財政をどのようにして立て直すのかのビジョンを示さなければならないのに、何もない。逆に任期中、消費税は上げない、と自分で縛ってしまっている。」
周辺にいる人々の反応はそれぞれに、6割評価、4割落胆といったところだ。』
上述の後、田勢記者は小泉純一郎の祖父で浜口内閣の逓信相・小泉又次郎が何度も登場する城山三郎氏著「男子の本懐」の引用して、
『祖父又次郎氏の「任侠」と、父純也氏(元防衛庁長官)の薩摩隼人魂が、小泉首相の中に同居している。そこに流れているのは、「死」に対する過剰なまでの意識だ。「死生観」と言うべきなのかもしれない。』
との記述が出てくるが、私は出来れば本文に城山三郎さんの名前を出してほしくなかった。
城山さんが「個人情報保護法」に対し、どれほど嫌悪感を抱いているか、田勢氏は知らないのであろうか?彼は、自らの墓石に「個人情報保護法案」に賛成票を投じた国会議員の名前を記して後世にその悪行の証拠を伝える、とまで語っているお方である。
城山さんは、「個人情報保護法」を強行採決した”「小泉純一郎」とは何か”を解説するために、自分の著作を引き合いに出してほしくなかったであろう、と私は推量する。
『【尊敬する人物】 吉田松陰、高杉晋作、織田信長
【感動した本】 「あゝ同期の桜」
【好きな音楽家と曲】 ワグナーのオペラ、フォーレのレクイエム
【好きな歌舞伎】 仮名手本忠臣蔵』
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田勢記者の見た小泉純一郎観が、次のように記載されていた。このあたりにくると、再び実らなかった恋を甦らせて少年の如き盲目の想いに浸りかけていると言わざるを得ない。島倉千代子ファンの田勢記者の心奥には、どうも同氏が真のジャーナリストたることを妨げる、日本的情緒の壁が存在するのかもしれない。
『ときに冷たすぎると思われるほどクールな心と、人前でもはばからず号泣する激情が、まだら模様になってこの人物を一層、理解不能の域へ追いやる。竹中平蔵氏への風当たりが強まると、「このまま辞めさせたら、民間人の彼は再帰が難しくなる」と思いやる。かと思うと、説明に来た財務省幹部に資料を投げつけたりする。やさしさと怒りがともに極端なのだ。』
読者の皆さん、赤字でマークした部分を再読していただけますか?この文章を読んだ読者は、財務省幹部に資料を投げつけた小泉首相に、10人が10人、好印象を受けると推測する。
小泉首相の最大の弱点の一つが、「官僚擁護」と言われ、私もまったく同感である。その官僚に対して、小泉首相は下手に出るどころか、資料を投げつけるという。
小泉支持者は、喝采を上げて「さすがに小泉純一郎」と支持を固くするに違いない。それどころか、小泉不支持の陣営の中からも、「小泉純一郎は、官僚に甘くはないではないか」と、小泉支持にくら替えする者も出て来るかもしれない。こうして小泉支持率は上昇していく。
実は田勢記者は、2002年2月18日に掲載されたコラム「風見鶏」の「動けば雷電の如くあれ」と題する記事で、上記の原型となる文章を次のように書き記している。
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『総理大臣執務室。説明に訪れる各省幹部が小泉首相の前に坐る。
時折、首相の大きな声が飛ぶ。
「わかった。要するにおれがやろうとしている改革は、無理だというんだな。君達の説明はわかった。
しかし、総理大臣のおれがやるといっているんだ。そういう内容のものを持って、出直してこい」
首相が投げ返した書類が散る。それを集めて退散する官僚たち。
このところ、こういう場面が増えているらしい。』
なるほど。小泉首相もやるもんだ。
口先だけの人間で、官僚にはお知恵拝借とばかりヘコヘコしているのかと思っていたら、とんでもない。
各省の幹部官僚を怒鳴りつけるなんて、大したもんだ。
投げ返された書類を、幹部官僚が拾い集めて退散していく図が目に浮かぶ。
小泉首相はやはり「改革」に本気だ!彼は必死にやっている。
みんなで小泉首相の「改革」を支えよう!
田勢記者は、読者のどのような反応を期待しているのであろうか?
まさか意識的に、『大きなスキャンダルでもなければこれほど大きく下がることは考えられない』と彼自身が言う、小泉内閣の支持率回復を目指して、上述のような反応を期待したとは思えないが。
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田勢記者の記事は、田中真紀子外相更迭による小泉内閣支持率急落の頃に発表されたものである。
田勢記者、あなたに真のジャーナリスト魂の片鱗があることは認めよう。しかし同時に、あなたの心の中には、真のジャーナリストたり得るためには障害となる日本的情緒に溺れようとする感情が存在するようだ。
日経新聞が新設した新コラム「核心」。その第一回を飾った田勢康弘・日経新聞コラムニストによる意欲作”「小泉純一郎」とは何か”は、結局のところ「まだら模様」に終わったようだ。
しかし、あなたは読者に「何か」を提供してくれる。
『5合枡には、1升の酒は入らない』
おそらくこの言葉は、今後、小泉純一郎を語る人々の間で、幾度となく語り継がれるであろう。
ただ、私は、こちらの言葉も気に入っている。
「総理大臣のおれがやるといっているんだ。”改革”持って、出直してこい!」
(2003/09/06)
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