目覚し時計のTAKA



コレダケハイワセテ!
Today's 目覚まし Shot



2002/12/28】 

有田芳生さんと北朝鮮拉致問題



時どき、有田芳生さんのホームページ「今夜もほろ酔い」を見に行く。
 http://www.web-arita.com/index.html

「酔醒漫録」というダイアリー形式のコメントが面白い。率直で几帳面な方のようだ。
有田さんのことは、例のオームの事件を通じて初めて知った。
有田さんが共産党に関係があった方だとか、都はるみやテレサ・テンに思い入れのある方だということは、彼のホームページで知った。
ホームページを公開し、毎日更新されているようだ。ご意見もはっきり書かれる方で、貴重な人材であると思っている。
ただ、どうも、私とは意見がかなり合わない。共産党員、そして除籍という一般人には窺い知れない経験をされてきた方であり、言葉にされない部分で、真実、現在の政治、社会に対してどのようなお考えを持たれているのか、もう一つつかみ切れない部分がある。
見解を異にする方のご意見を知ることは、自らの見解を顧みるたいへん良い機会となり得る。
そういう意味も含め、また彼の「酔醒漫録」のほのぼのとした味も捨て難く、時どきお邪魔する。
この日ホームページを訪れると、トップページに、次のような「告知」が掲げられていた。

北朝鮮の拉致問題を解決するための意見広告運動をはじめました。ニューヨーク・タイムズで世界の市民に訴え、金正日国防委員長に物申すという趣旨です。この取り組みに対して横田滋さんと早紀江さんは次のようなメッセージをよせてくださいました。

 北朝鮮による日本人拉致事件の解決は日本人自身が自力で解決すべき問題ですが、同時に国際世論の高まりも欠かせません。ニューヨークタイムスへの意見広告掲載は、被害者家族の大きい支えとなります。よろしくお願い申し上げます。

意見広告のためのホームページを紹介します。気持ちを形にするために、できる範囲でカンパしてくださるようお願いいたします。


北朝鮮の拉致問題を解決するためにNYタイムズに意見広告を載せることが、どれほど効果があるかという点は、別問題であろう。
要は、何らかの行動である。自分にできる範囲内のことで、たとえほんの些細なことでも、一つの行動を起こすーーこれが民主主義社会に生きる個人にとっても、社会にとってもたいへん重要なことなのではあるまいか。
有田さんが、ニューヨーク・タイムズへの意見広告掲載の構想を、ネット上で初めて公表した11月4日の「酔醒漫録」には、次のように書かれている。
 11月4日 ニューヨークタイムズに意見広告を出す運動をはじめようと心を固める。
 「ザ・ワイド」に拉致被害者のご家族が出演されているころから気になったこと。それは自分の思いをテレビで語ることだけでは不誠実だということだ。青いリボンをつけることはいまでもできる。しかし、私個人が為すべきことは「そうではないだろう」とも思った。試行錯誤の末に思い到ったのは「前代未聞の個人独裁体制」の頂点にいる金正日総書記に直接意見を伝えることだ。その手段としての意見広告。媒体はニューヨークタイムズ。国際的にも影響力があるこの新聞に英文とハングルで意見を述べる。


その後、呼びかけ人を集(つど)って「意見広告7人の会」を結成し、趣意書を作り、会計担当者、翻訳担当者、デザイン担当者、ホームページ担当者を決めて、記者会見に漕ぎつけたのが11月28日。
それから1週間で延べ1,555人が募金に協力し、12月6日には、募金総額が1,000万円を越えたという。NYタイムズ紙意見広告料は4万9,400ドルすなわち約600万円だそうで、その目標を越える余剰金は、横田ご夫妻などの「家族の会」にすべてカンパされるということだ。
そして12月23日夜、ニューヨーク・タイムズ紙に、待望の全面意見広告が掲載された。

http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt25/20021223AT3K2302Y23122002.html
(12/23)拉致問題解明求めNYタイムズに意見広告

 【ニューヨーク23日共同】 23日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による日本人の拉致問題に関する、ジャーナリスト有田芳生さんらの全面意見広告を掲載した。
 意見広告は英語と朝鮮語で構成。「これは事実である」との大見出しの下に横田めぐみさんの写真を載せた。
 読者には拉致問題の概要と、今年になって北朝鮮側が拉致を初めて認めたことなどを説明。さらに、北朝鮮の金正日総書記に対しては、日本政府または国連による調査団を受け入れ、拉致問題に関するあらゆる情報を開示するよう求めている。
 意見広告は有田さんや、音楽評論家の湯川れい子さんら7人の連名で出された。


有田さんの心意気は、「酔醒漫録」の次の文章に表れている。
 12月18日 あまたの社会運動を見ていて違和感が生じていた。何かの運動課題がある。そこには「呼びかけ人」がいて「賛同人」が求められる。私もこれまでそうした形での協力をしてきたこともあるが、やめることにした。いわゆる有名人主義で人の名前だけを揃えることにどこまで意味があるのかと思ったからだ。私が言いたいのは、「呼びかけ人」や「賛同人」にただ名前を連ねることで何がしかの行動をしたということにはならないということだ。それぞれの人生観があり、行動基準もあるだろう。他人の行為にあれこれいうつもりはない。賛同してくれるなら、それを多いに活用もしたい。しかし、私の生き方として、ただ名前を連ねるだけの行為などはするつもりもない。


「ザ・ワイド」に拉致被害者のご家族が出演されたことが機縁になったのであろうか、有田さんは、横田滋・早紀江ご夫妻とごじっ懇の間柄と見受けられ、北朝鮮による拉致問題には、特に力を注いでおられるようである。
今般、自ら構想し、音頭をとって実現の運びとなったニューヨーク・タイムズへの意見広告は、たいへん立派な行動であると心から賛同する。
ただ、前にもちらっと申し上げたように、私と有田さんとは、かなり意見を異にする部分が多い。北朝鮮による拉致問題においても、実は然(しか)りだ。
12月17日の「酔醒漫録」を読んで、驚いた。

12月17日 どこまで書いていいのやら。あくまでも情報レベルとして記録しておく。いまの推移で新たな問題が生じなければ新しい年に事態は動く。北朝鮮は高位の政府特使を派遣すれば拉致被害者の家族を帰すという。その特使とは誰か。北朝鮮側は中曽根康弘元首相を念頭に置いているようだ。ところが小泉首相には打算がある。来年1月9日から12日のロシア訪問。プーチン大統領との会談が予定されている。その後、ドイツを訪問する計画がキャンセルされ、12日にハバロフスクに向かうという。そこで北朝鮮高官、もしかしたら金正日総書記と会談する。拉致家族の帰国はそこで動くというのだ。果たして本当なのか。外務省関係者と永田町関係者の別々の情報だ。


ご本人が、「どこまで書いていいのやら」と言うほど、微妙な内容の情報である。
もしこの情報が真実であるなら、これは大変なことである。有田さんご自身も、「果たして本当なのか」と自問しておられる一方で、「いまの推移で新たな問題が生じなければ、新しい年に事態は動く」と断定し、「外務省関係者と永田町関係者の別々の情報だ」と情報の確度を強調している文章もある。

確かに、今般の小泉首相のドイツ訪問キャンセルとハバロフスク立ち寄りへの変更は、他のメディアでもきな臭い捉え方がされているのは、事実だ。
拉致家族の方から情報を取れる立場にある有田さんということもあり、ひょっとして小泉首相はやる気かな?という思いが、私の頭をかすめた。
少なくとも、有田さんご自身は、そのようなことが起っても不思議でも何でもないとお考えのような印象を受ける。
私が今回、このテーマを題材に取り上げた最大の動機が、そこにあった。


小泉首相が、「北朝鮮高官、もしかしたら金正日総書記と会談」したとして、いったい何を話すと、有田さんはお考えなのであろうか?
金正日が、何の見返りもない話し合いに対して「拉致被害者の家族を帰す」と、有田さんは本心で思っているのだろうか?
もし、小泉首相から金正日に「拉致被害者家族の帰国」への見返りが出されるとすれば、それは何なのであると有田さんはお考えであろうか?
米国との直接交渉なしに、金正日が「核・ミサイル問題」で小泉首相に何らかの譲歩をすると、有田さんはお考えなんだろうか?
「核・ミサイル問題」の進展なしに、日本は、金正日が「拉致被害者の家族を帰す」ほど喜ぶような見返りを出せると、あるいは出していいのだと、有田さんはお考えなんだろうか?
日本国民が反発しない程度の見返りを小泉首相が提示するだけで、金正日が「拉致被害者の家族を帰す」とでも、有田さんはお考えなんだろうか?
これらが、即座に私の頭をよぎった疑問であった。


「酔醒漫録」を読むと、そこここに金正日の北朝鮮に対する有田さんの主張が述べられている。
10月30日 北朝鮮問題。原則を貫くことで事態は打開されるはず。ファン・ジャン・ヨブ元書記は、金政権を打倒して改革・解放路線を実現するしか北朝鮮人民は救われないという。

 10月31日 外交は原則を堅持しつつ、押したり引いたりの駆け引きの場だ。拉致被害者の家族の難問も、北朝鮮が起こした事件に付随して生じた課題だ。その苦悩を解消する責任は北朝鮮=金正日体制が全面的に負わなければならない。家族が膝つきあわせて話しあうことがベスト。そんなことは誰だってわかっている。しかしだからといって「北へ戻って」というのは、あまりにも北朝鮮の現状を知らない意見だ。最高幹部だったファン・ジャン・ヨブ元書記が詳細に明らかにしているように、「国家をひとつの巨大な監獄」に作り上げたのが、金王朝(金日成ー金正日)。そこで「自由意思」による話し合いなどできるわけはない。

 11月20日 私の基本的立場は金正日個人独裁体制が崩れることを求めること。拉致問題や核問題の解決も人権を回復するための民主化闘争との関係で考えている。いま必要なことは拉致問題を解決するために何らかの行動することだ。ブルーリボンでもいい、意見広告への賛同でもいい。発言の場を持ちながらただただ口舌の徒である人たちを私は心の底から軽蔑する。

 12月11日 (横田ご夫妻から)いただいためぐみさんの写真を見ながら思いはさらに固まる。13歳の少女たちを拉致する国家などやはり打倒するしかないのではないか。国交回復は民主化された北朝鮮との間でこそなされなくてはならないと思う。

これらのことから有田さんは、「金正日個人独裁体制は、北朝鮮に民主化をもたらすためにも、打倒され崩壊されねばならない。国交回復は、民主化された北朝鮮との間でこそなされなくてはならない」と考えておられるようだ。
また拉致問題に関しては、「全面的に責任のある北朝鮮=金正日側から、動かねばならない」とも考えておられるようだ。


となると、北朝鮮に残された帰国生存者5人の家族は、どうなってしまうのであろうか?
有田さんは、小泉首相が金正日と交渉して連れ帰ってくれると、お考えなのであろうか?
実は、有田さんは、10月24日の「酔醒漫録」に、このようなことを書いておられた。
 10月24日 北朝鮮の拉致被害者。マスコミでは報道されていないが、父親に向かって泣きながら「帰りたくない」と訴えている人がいる。5人のうち複数。この本音の意思をどのように政治的な形にするのか。「誘拐犯」のもとに被害者を帰すことなどもってのほか。あとの難題は政治の課題。原則を貫くことで、現実的な妥協が出てくることもある。北朝鮮という国家への無知がいまだ多い。


私は、ここで、拉致問題のもっとも根源的な部分を問いかけたい。
もしも、帰国した「生存」拉致被害者が「父親に向かって泣きながら”帰りたくない”と訴えている」ことが事実であるならば、そんな国に残された拉致被害者の家族の立場というものは、どのようなものなのであろうか?
24年間、拉致された子供たちを探して遂にめぐり合った親と子供たちが「親子」の関係であるならば、帰国した「生存」拉致被害者と北朝鮮に残された子供たちも、同様に「親子」の関係である。
どちらの「親子」関係がより重要か?などと問う者はいるまい。にもかかわらず、拉致被害者の子供たちは、「近くて遠い国」日本に帰国した親との絆を引き裂かれて、打倒され崩壊されねばならない「ひとつの巨大な監獄」のような国家に残されて生きているのが、現実の姿である。
私は、24年ぶりに再会した「親子」の関係ばかりに目を向け、切り裂かれることになったもう一つの「親子」の関係には目を背けている印象のある日本のメディアの報道姿勢に、大きな疑問を感じている者だ。


「私と有田さんとは、かなり意見を異にする部分が多い」と上述した。
この北に残された拉致被害者の家族について、有田さんは、「酔醒漫録」で次のように語っている。
 12月2日 最近のテレビなどで「5人の拉致被害者はいったん北朝鮮に帰って家族を説得すべき」との論説を語るコメンテーターが徐々にだが増えてきている。その中には金正日総書記へのインタビューを目的として、あえて北朝鮮に秋波を送っているジャーナリストもいるのだからまったくもって卑屈だ。北朝鮮外務省の日本担当局長は「5人が戻ってきたとき、日本には戻さない」と北京で語っていたという。これは外務省の担当者なら知っている事実だ。いま5人の被害者がどれほどの恐怖感を抱いているのかを無責任な評論屋たちは知ろうともしない。


有田さんは、帰国拉致被害者の夫や子供たちが、残された北朝鮮でいま、「どれほどの恐怖感を抱いて」毎日を過ごしているとお考えなのであろうか?
率直に言わせていただければ、「金正日個人独裁体制は、打倒され崩壊されねばならない」との見方と、北朝鮮に残された拉致被害者の家族の安全とは、両立するものであろうか?
北朝鮮に残された拉致被害者の家族は、日本側によって見捨てられたのではないだろうかと、私は憂慮している。



<5人の胸にバッジはなかった>


12月18日、新潟市内で約2カ月ぶりに再会した北朝鮮による拉致被害者5人は、翌19日、「家族会」代表の横田滋・早紀江さんご夫妻と蓮池透事務局長、「拉致議連」事務局長の平沢勝栄議員らと今後の対応などを話し合った。
その5人の左胸には、「子供たちと縁が切れることを意味する」として、前日まで外すことをためらい続けてきた北朝鮮のバッジがなかった。
久しぶりの再会に笑顔が絶えることのなかった前日とは対照的に、5人の表情は硬く、決断の重さが窺がわれた。(日経新聞2002年12月19日夕刊21面)

中山恭子内閣官房参与は、5人に対し、「なにも無理にバッジを外さなくてもいいのよ。いいんですか?」と、逆に北朝鮮に残された子供たちを心配して、念押ししたという。
5人は、なぜバッジを外したのであろうか?
件(くだん)の中山参与は、記者団に、「日本の皆さんに何か感謝の気持ちを込めて伝えたいという(5人の)気持ちの表れ」と語った。
しかし、安倍官房副長官ですら、「日本は自由な国。(バッジを)着けていたければ着ければいいし、外したくなったら外せばいい」と話したくらいで、国民の大多数が、5人がバッジを外せない理由を理解していると思われるこの段階で、なぜ彼らがバッジを外す重い決断に至ったのか、実に不可思議なことであった。


「家族会」を率いる会長の横田滋さんと事務局長の蓮池透さん。この2人の発言が、金日成バッジをめぐって対照的に分かれた。

横田滋・早紀江さんご夫妻が12月22日、毎日新聞のインタビューに応じて、「家族会」と「個人」との間で揺れ続けてきた思いを、次のように語った。
「めぐみの消息を知るため、当初から訪朝の意思はあった。しかし、家族会で訪朝しないことを決め、全体に悪影響が出るのであれば、と見送ってきた。娘のことを思う一人の親である一方、(代表を務める家族会の)全体の運動でもあった。
訪朝をしないという決定は、状況の変化や個別の事情については配慮するという取り決めだった。『会いに行ったほうがいい』という手紙を多くもらうようになり、
帰国した拉致被害者5人も金日成バッジを外した。今なら私たちが訪朝しても問題がないと思った。」 (毎日新聞2002年12月23日朝刊)

一方、「家族会」の事務局長・蓮池透さんは26日、「家族会」の記者会見で、「5人がバッジを外して北朝鮮公民ではないと意思表示した以上、北朝鮮は即座に家族を帰さなくてはならない」と語ったという。


「酔醒漫録」に、横田さんの訪朝意向に触れた部分があった。
 12月22日 横田さんの訪朝について波風が立ちそうだ。原則を崩すことなく現状を打開できるならば訪朝すべきだろう。ただし、日本政府関係者の付添い、これまでに出している拉致被害者に関する100項目以上の質問に答えることなどを条件とすれば、横田訪朝を北朝鮮側は認めないだろう。現状で北朝鮮を訪問したいというのは横田滋さんだけだという。実現へのハードルは高い。注目すべきは来年1月の小泉訪ロであることはすでに書いた通りだ。


13才の下校途中を北朝鮮工作員によって拉致された横田めぐみさんの悲劇は、拉致問題の”象徴”とも言うべきものであった。
めぐみさんの父・横田滋さんが、代表として「家族会」を今日まで引っ張ってこれたのは、偏(ひとえ)にめぐみさんはどこかで生きている、そして助けを待っていると信じていればこそであった。
ところが、小泉訪朝でもたらされたものは、めぐみさんの痛ましいとしか言葉のない一片の死亡通知であった。
その後、5人の拉致被害生存者が帰国を果たし、永住帰国を宣言したことで、拉致問題の焦点は、北に残された5人の家族の帰国に移ってしまった。
一時帰国のはずであった5人が、永住帰国を宣言して北に戻らないことがはっきりした段階で、北朝鮮は5人の家族の返還に拒否反応を示し、死亡と通知した8人については取り付く島がない状況となってしまった。
北朝鮮の核開発問題は深刻化の一途をたどり、このままでは5人の家族の帰国実現の後に控える死亡したとされる8人の再調査要求がいつ実現するのか、果たして実現しないまま封じ込められてしまうのか、誰にも予想だにできない状況となっている。
一致団結した「家族会」としては、その一員の子供たちが帰国を果たしたことは嬉しい限りであると推測するが、一方で、一人の親として13才で拉致され 「平壌の金正日政治軍事大学で日本人化教育の教員をしているらしい」との情報がもたらされた平成9年1月下旬以降、北朝鮮に生存しているめぐみさんの救出を目指して必死の活動を続けてきた父・滋さんの現況に対する痛切な思いは、他人が計り知れないものがあると私は思う。

帰国した5人が金日成バッジを外したというメッセージは、金正日に必ず伝わろう。
その意味するところは、誰が考えても「5人の家族の帰国実現の不透明化」である。5人の家族の帰国実現が不透明化するということは、続く8人の消息の再調査がいつ実現するかなど予想外だということだ。
横田滋さんにとって、めぐみさんは北朝鮮からは死亡と通知された状況にあり、にもかかわらず周辺情報から生存の可能性も捨て切れない。もし生存していたとしても、北朝鮮が粛清により自らの公式通知を無理やり実現させてしまう憂慮もある。
私は、今回の横田滋さんの父親としてのやむにやまれない心の叫びとしての訪朝希望発言が、よくわかる。滋さんは、外見同様、とても心の温かい人だとよくわかった。悲劇だ!悲劇としか言いようがない。


有田さんは、「酔醒漫録」で、「注目すべきは来年1月の小泉訪ロであることはすでに書いた通りだ」として、小泉首相のハバロフスク立ち寄りで何かが起ると期待していた。
これも、もっともな期待なのである。
12月23日付の日経新聞朝刊2面は、『局面の劇的な打開のため、小泉首相が1月上旬にロシアを訪問する際、モスクワからの帰途に立ち寄るハバロフスクで、北朝鮮政府関係者や拉致被害者の子供らと接触するとの憶測も浮上している』という記事を流している。


ただ、同23日には、小泉訪ロに期待を寄せていたはずの有田さんの「酔醒漫録」に、すでに次のような書き込みがなされていた。
 12月23日 1月9日から12日までの小泉訪ロで、北朝鮮側との接触を狙う外務省。北の政府高官あるいは拉致被害者家族との接触という要求は現実の課題だ。しかし、いまのところはどうも希望的観測に終わりそうだ。北朝鮮側からすれば、日本側は5人を戻すと約束していた、何よりも12月には国交回復すると約束したではないかという。もちろんこれは田中均アジア大洋州局長(当時)の約束だ。それに対して「約束はしていない」と突っぱねるだけでは現状は打開できない。政府の約束ではないことなどを継続的に説明し続けることだ。ただし、核問題などで国際世論がさらに高まったときに金正日総書記がどう判断するのかという未知の要素もある。


本日28日の日経新聞朝刊2面に掲載された小泉首相訪ロの日程によれば、ハバロフスクには12日早朝に到着し、夕方まで滞在。州知事との会談や記者会見などが予定されているが、北朝鮮要人や拉致被害者家族と会う日程は組まれていない。


訪朝意向を表明した横田滋さんも、「家族会」事務局長・蓮池透さんの「意思はわかるが、よくお考えになっていただければ幸いです。(当面は訪朝しないという)家族会の方針は、従来と変わっていない」という発言に後を押されたように、訪朝意向を撤回した。


ということで、5人の家族はどうなってしまうのであろうか?
有田芳生さんの「酔醒漫録」を読ませていただいて、北朝鮮拉致問題に関するご意見の中で、少し気になった箇所があった。次の部分である。

11月20日 拉致問題や核問題の解決も、人権を回復するための民主化闘争との関係で考えている。
12月11日 国交回復は、民主化された北朝鮮との間でこそなされなくてはならないと思う。


有田さんは、拉致問題や核問題の解決を、「人権」を回復するための民主化闘争との関係で考えておられるという。
この場合、「人権」の中には、当然、日本の領土内から北朝鮮の工作員によって拉致された被害者の「人権」の回復が含まれいることは、もちろんだと思う。
しかし、有田さんがさらに、「民主化された北朝鮮」という言葉を語るとき、私にはどうしてもその「人権」の中に、「北朝鮮人民」の「人権」回復も含まれているような気がしてならない。
あるいは、有田さんの大義は、実は、「ひとつの巨大な監獄」の如き「金正日個人独裁体制」打倒による北朝鮮人民の「人権」解放すなわち「北朝鮮の民主化」にあるのではないか、という思いがしている。


私は、文頭の方で、有田さんについて、「共産党員、そして除籍という一般人には窺い知れない経験をされてきた方であり、言葉にされない部分で、真実、現在の政治、社会に対してどのようなお考えを持たれているのか、もう一つつかみ切れない部分がある」と申し上げた。
この「つかみ切れない部分」とは、小泉首相に対する有田さんの見解が、好例である。
有田さんは、小泉首相をどのように評価されている方なのか?「酔醒漫録」を読んでも、もうひとつ見えない。

有田さんは、日本テレビのウィークデイ午後の報道番組「ザ・ワイド」にレギュラー出演されている方なので、あるいは「MEDIAの作為」により、内閣支持率の高い小泉首相を批難するような発言を慎むよう、指導されているのかなという気もする。

また私は、日本経済・社会を崩壊の途に導いている小泉流政治が、意外と共産党関係者に支持されているのではと、常々推測している。
有田さんは、すでに共産党を除籍された方ではあるが、だからといって、自らが信念を持って行動してきた共産主義の理念ーー特に、その良い部分ーーを捨て去ることは考えておられないのではなかろうか?

共産主義の理念ーー「抑圧された人民の解放、民主化」。
有田さんが北朝鮮の拉致問題や核問題に取り組み基本姿勢とは、実は、この「金正日個人独裁体制」に抑圧された北朝鮮人民の「人権」回復と北朝鮮の民主化にあるのではなかろうか?


私は、13才の下校途中の子供を拉致した許し難き金正日による国家犯罪を、真正面から「政治問題」として捉えるのではなく、忍び難きを忍び、耐え難きを耐え、「人道問題」として捉えたい。
拉致問題に関しては、金正日に対し、犯罪者として5人の拉致被害者家族の返還、死亡したとされる8人の再調査、さらには未だ認定されていない多数の拉致被害者の情報提供を要求するのではなく、人間としての金正日に、人道面からの配慮、行動を求める「人道外交」を表に出してはどうかと考えている。

現在の強硬一本やりの外交では、拉致被害者5人の家族をはじめとして、横田めぐみさんらの再調査など及びもつかない。
それどころか、行き着く先は、有田さんが言われるような「金正日個人独裁体制」の崩壊と北朝鮮人民の「人権」回復、民主化という近未来であるかもしれない。
しかし、その理想的近未来が実現する前には、かなりの血が流されるであろう。
強硬対強硬のぶつかり合いの前には、衝突しかあり得ない。
拉致問題を、日本が忍び難きを忍び、耐え難きを耐え人道問題」として解決できたとき、核・ミサイル問題において金正日が核査察を受け入れ、核廃棄に合意するという譲歩も有り得るかもしれない。
多くの血を流すことなく、日朝国交正常化、朝鮮半島統一、金正日退陣といった不可能が可能になる日がいち早く来るかもしれない。


有田さんのホームページに題材を借りて、「酔醒漫録」から多く引用した上で、有田さんの北朝鮮拉致問題に注ぐ熱意を、「金正日個人独裁体制」打倒による北朝鮮人民の「人権」解放すなわち「北朝鮮の民主化」にあるのではないか」などという勝手な推測をして、「酔醒漫録」からの引用”マカリならぬ”と、お怒りにならせてしまったかもしれない。


私は、共産党支持者でも宗教政党支持者でもない。しかしまた同時に、私は、既得権益にすがる体制派でもない。
何といっても私は、有田さんが推し進められる「人権」回復と民主化の、日本における更なる進展を熱望する「日本人民」の一人なのであるから。
有田芳生さんの今後益々のご活躍を願っております。
(2002/12/28)
BACK
NEXT
TOP
MENU
Message Board