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2002/02/10】 
 「責任のとり方」


小泉首相は4日午後の衆院本会議で、就任後初の施政方針演説を行った。
演説の中で、狂牛病(BSE)問題に関しては、次のように語った。

『狂牛病問題は、国民に食に対する不安を与えました。すでに食用として処理されるすべての牛を対象とした検査を行っており、現在流通している食肉はすべて安全なものとなっています。感染経路の究明については、引き続き全力を挙げてまいります。今後とも食肉をはじめとする「食の安全」と国民の安心を確保するため最善を尽くします。』

民主、自由、共産、社民の野党四党は4日衆議院本会議終了後、狂牛病問題をめぐる政府の対応が不十分であったとして、武部勤農相の不信任決議案を衆院に提出した。 提出後の会見で民主党鮫島宗明議員は、「本日行われた予算委員会での答弁、そして施政方針演説でも、首相・農水相は現状を乗り切るには認識が不十分であることを改めて確認した」と、不信任決議案提出に踏み切った経緯を語った。提案理由詳細は次のとおり。

<農林水産大臣武部勤君不信任決議案 提案理由>
 昨年9月、千葉県でわが国初の「BSE」感染牛が確認されたことは、わが国畜産業界のみならず、国民にとってまさに衝撃的な事態であった。その後、北海道、群馬と相次いで「BSE」感染牛が確認されるに及んで、わが国の牛肉を中心とした食の安全性に対する不信は大きく広がり、生産者、流通・加工業者、小売店や飲食業者、そして消費者に甚大な影響をもたらしている。
 この事態は、政府及び農林水産省の重大な失態によってもたらされたものである。農林水産省はこれまで一貫して、わが国における「BSE」感染牛の発生の危険性を否定しつづけ、昨年6月にはEUから日本は「BSE」感染牛の発生の恐れが高いと指摘されながら、これを全面的に否定し、そのような評価を受けることさえ拒否した。
 さかのぼれば、1996年4月に肉骨粉使用禁止のWHO勧告を受けたにもかかわらず、行政指導にとどめたことが、今日の事態を招来させる原因となった。WHO勧告を受けて設けられた農林水産省の「検討会」で、専門家から相次いだ法的禁止措置の提起を無視した結果であるが、その対応に重大な責任をもつ当時の農林水産省幹部をかばい、真相究明に蓋をしたのが武部農林水産大臣である。

 いわんや、その農林水産大臣が「感染源の究明はそんなに大きな問題か」などと暴言を吐き、さらに、「雪印食品問題」では、不正の温床を放置し、そのチェックに頬かむりしてきた。このような無責任な大臣が、その職にとどまるべきではないとの声が国民の間から澎湃として起こったのは当然である。
 最早、農林水産省に問題を克服する能力があるとは到底考えられない。武部農林水産大臣の罷免こそが、わが国の農林水産行政への信頼回復と「BSE」問題解決に向けて、最低限必要な措置であり、事態打開への端緒である。
 よって、ここに武部農林水産大臣の罷免を強く求め、不信任決議案を提出する。

衆院は5日午後の本会議で、野党4党が提出した武部農相不信任決議案の採決を行った。採決に先立って、民主党の鮫島議員が、決議案の趣旨説明を行った。

冒頭鮫島議員は、NGO排除問題での外相、外務次官らの更迭、雪印事件での同社社長辞任などを引き合いに出しながら、「日本で2000億円を超える大損害を生み出しながらも、未だに居座り続けている人物が一人いる。それが武部農水相だ」と述べ、「いよいよ、けじめをつける日がきた」と宣告した。
続いて、1996年の肉骨粉使用禁止に関するWHO勧告を受けながら対応を行政指導にとどめたことに始まり、EUからの警告の拒否、最初の感染牛発見後の「焼却処分」というウソ、「もともと牛肉も内臓も安全」なる無責任発言、「感染源の究明は大きな問題か」など数々の暴言といった農水省の失策を挙げ、これらが消費者の不安を煽り、被害を拡大させてきたことを指摘。農水相がやめることは「十分条件でなく必要条件だ」と迫った。
最後に鮫島議員は、信頼できる食品安全行政の確立は与野党を越えた共通課題だと述べ、与党議員にも決議案への賛成を呼びかけた。
 
その後、決議案は採決が行われ、自民、公明、保守の与党3党などの反対多数で否決された。投票総数462票で、賛成186票、反対276票。自民党の平沢勝栄氏が棄権、後藤田正純氏が本会議を欠席した。

武部農相の衆院での不信任決議案は否決されたが、採決では自民党から2人の造反者が出るなど、与党内には農相の辞任論がくすぶり続けているという。6日の日経新聞朝刊2面に、次の記事が載った。

小泉首相は5日夜、「苦しくともやるべきところはやるんだと。今辞めれば投げ出したと、無責任になる」と、記者団に農相を守る姿勢を強調した。
武部農相も不信任案の否決後、「立法府の信任を受け、
謙虚に職責を全うすることが私の責任だ」と記者団に訴え、与党控室を挨拶して回った。
与党内の反応は冷たい。「不信任案に賛成したいが、そうはいかない。農相が辞めなくていいと思っている人はいないというのが正直なところだろう」(自民党江藤・亀井派幹部)と、農相の責任を厳しく受け止める向きが多い。
公明党の冬柴鉄三幹事長は「政治家の出所進退は自ら決めることであり、否決されたからそれでいいということではない」と厳しい。
保守党の野田毅党首も、「武部氏にも問題があった。辞めるならもっとタイミングがある」と辞任論が再燃する可能性を否定しなかった。

採決に先立つ自民党総務会では、山崎幹事長(武部氏は山崎派である)とたもとを分かった江藤・亀井派最高顧問の山中貞則氏が、「不信任案に同意する気はないが、役人を辞職させ、自らは責任をとらない姿は到底許すことができない」との檄文を配付。
野中広務元幹事長も、「否決すればさらに厳しい批判を浴びることを考えて執行部は臨むべきだ」と注文を付け、山崎氏らをけん制した。
首相を支える森派幹部は、「武部農相を辞任させることで内閣改造につなげ、小泉内閣を揺さぶる政治的な思惑が透けて見える以上、その通りにするわけにはいかない」とガードを固める。
野党は、衆院に続き参院でも農相の問責決議案の提出を検討しており、責任の手を緩める気配はない。
政府首脳は5日、農相辞任の可能性について「国会が止まったらそういうこともあるかもしれないが、今はそうではない」と微妙な言い回しをした。

衆院本会議は6日から、小泉首相の施政方針演説に対する各党代表質問が始まった。

民主党川端達夫氏>狂牛病問題で、農相を罷免すべきだ。
小泉首相:農相の取るべき責任は、BSEに関する正確で科学的な情報を国民に伝えること、BSE発生に伴う生産から消費に至る様々な波及に対する措置を講ずること、過去の行政措置を点検し、将来にわたりBSE発生防止に取り組むことだ。今後とも職責を果たしてほしい。

自民党山崎拓氏>狂牛病問題への取り組みは。
武部農相:昨日私に対する不信任決議案が否決されたが、真摯に受け止めつつ、謙虚な気持ちで職務を遂行していきたい。今後も生産現場や消費者の意見をしっかり受け止め、関係省庁と連携を図りながら国民に安心してもらうよう狂牛病対策の実を挙げるために全力を尽くしたい。雪印食品問題は、悪質極まりないもので、徹底した事実究明と表示制度の見直しや制度の改善・強化を急ぎ、牛肉に対する信頼と安心を取り戻していく。

民主党江田五月氏>更迭すべきは田中真紀子前外相ではなく、狂牛病対策に失敗した武部勤農相だ。
小泉首相:農相の不信任案が否決され、立法府からの信任が得られた。今後とも職責を果たし、国民に安心していただける態勢をつくるよう全力を尽くしてほしい。
江田氏:「食の安全」のための包括的行政機関をつくるべきだ。
小泉首相:農相と厚労相の諮問機関であるBSE問題に関する調査検討委の報告なども得て、食の安全と安心を確保する仕組みづくりに取り組む。JAS法など食品の表示制度を見直し、改善強化を急がせるとともに食品衛生法等に基づく規制、基準の遵守の徹底を図る。

自由党都築譲氏>野党が策定した狂牛病緊急対策措置法案を政府・与党も率先して成立させるべきだ。
小泉首相:生産者や流通業者等への対策の法的措置は、今後どんな対応が適当か議論し、BSEの発生やまん延防止、感染経路の究明に遺漏のないよう関係法令の見直しを検討している。今国会に法案を提出する予定だ。

共産党志井和夫氏>狂牛病の危険性についてEUは日本に警告を発していたが、政府はその警告に逆に抗議していた。国民の命に責任を持つ政府の取る態度か。
小泉首相:結果的にBSEが発生したことからすれば、EUの指摘も踏まえて我が国独自の判断として発生時に備えた対応のあり方等について危機意識を持って検討する必要があったのではないかと思う。

社民党福島瑞穂氏>更迭すべきは田中前外相ではなく、武部勤農相ではないか。
小泉首相:農相が取るべき責任は、狂牛病に関する正確で科学的な情報を国民にきちんと伝えること、BSE発生に伴う生産から消費に至る様々な悪影響に対応するための措置を講ずること、過去における行政措置などを点検し、将来にわたりBSE発生防止に取り組むことにあると考える。今後ともこれらの職責を果たし、国民に安心してもらうよう全力を尽くしてほしい。


8日の日経夕刊2面には、次の記事が載った。

自民党の山崎拓幹事長は8日午前の記者会見で、与党内で武部農相の自発的辞任を求める声が相次いでいることについて、「当面する狂牛病対策に責任を持って、真摯に協力に取り組んでいくべきで、それが武部氏の責任を全うする姿ではないかと思う」と述べ、辞任は必要ないとの見解を改めて強調した。
武部農相も閣議後の記者会見で、「
私がリーダーシップを発揮して問題の究明や対策の徹底に当たりたい」と述べ、農相の職にとどまりたい考えを示した。

日本経済の惨状は、もはや誰の目にも明らかである。そして、もうそろそろ、なぜ日本経済がそこまで落ち込んでしまったかの主たる原因を特定してもよい頃ではなかろうか?それは、よく言われるところの「政官癒着」にあると、私は見る。
田中真紀子前外相が、NGO排除問題で解き放ったのも、実はこの「政官癒着」であった。自民党の鈴木宗男議員と外務官僚が癒着して、NGO2団体のアフガン復興会議への参加を排除しようとした。その癒着を正した田中前外相は、明確なる理由なくして小泉首相により更迭された。

日本経済を復活させるためには、このおおもとの病巣である「政官癒着」を断ち切らなければ不可能である。それが「改革」というものだ。「自分に反対するものは抵抗勢力、賛成するものは協力勢力」とか国会答弁でもほざいて正義の使者”月光仮面”を気取っている小泉首相であるが、彼の言う「改革」がエセであることは、今回の「田中外相更迭」が明白に示している。
小泉首相は、橋本派の牙城である「道路公団」の民営化に固執したが、彼自身は財務官僚と癒着している。現在進行中の「医療費3割負担」の問題にしても、自民党内で小泉首相一人これに固執している背景には、影で糸引く財務官僚の「増税路線」が垣間見られる。

小泉首相は、官僚の天下り規制にも不熱心である。公務員の給料引き下げにも乗り気でない。彼は「政官」のうち、「政」には多少なりとも厳しい目を向けようとしているが、逆に「官」には、おんぶにだっこの有り様である。小泉首相自身政治家であり、「官」を後ろ盾にした権力基盤を築こうとする彼のやり方は、まさに「政官癒着」そのものだ。今回の狂牛病問題においても、国民の感情そっちのけで、「官」の農水省をかばうのに腐心している。


私は前々から、こんなバカな理屈はないと思っていた。
小泉首相は、武部農相のとるべき責任について、こう言っている。「今辞めれば投げ出したと、無責任になる」「今後とも職責を果たし、国民に安心していただける態勢をつくるよう全力を尽くしてほしい」と。
武部農相自身こう言っている。「謙虚に職責を全うすることが私の責任だ。

国民の血税により穴埋めされる狂牛病被害額は、2000億円に上るという。いや被害額はこれからさらに増え続けよう。野党4党が不信任決議案の提案理由の中で取り上げているように、農水省の怠慢は二度や三度ではない。にもかかわらず、今年初めにとられた省内人事で、事務方の最高責任者である熊沢前事務次官と畜産部長氏が、いずれも規定の高額な退職金をもらい、通常の人事異動枠内において退職したのみである。その時、武部農相は、「責任は個人ではなく、組織にある」と言った。

現実にこのような不始末が起っているにもかかわらず、農水省においてこれまで誰一人として責任をとった人間がいないということだ。こんなバカなことはない。
「責任ある立場にある人間は、責任をとらねばならない」
「責任のとれない人間は、責任ある地位に着くべきではない」

過去、日本では、このようなごく当たり前のことが、なおざりにされてきた。その結果が、当然のことながら、「政官」における「無責任」の横行であり、その結果としての膨大なる財政赤字の積み上げであった。

読者の皆さんも、よーく考えていただきたい。
司直以外に、「官」の過ちを正すことができるものは、国民の世論と、国民の支持を背景にした政治家しかいない。
国民の世論も、マスメディアなどに誘導されて、なかなかまとまっと力とはなり得ないのが実情だ。「官」の力がいかに強大なものであるか、いみじくも田中真紀子前外相が語っている。
「次官」とは、天皇のようなものだ」と。
政治家が「官」を正さずして、誰が強大な力を持つ「官」を正せようか?小泉首相のように、正義漢面をして、裏で「官」と癒着しているなど、もっての外だ。今回の狂牛病問題における武部農相の最大の過ちは、事務方最高責任者であった熊沢前事務次官に「責任」を取らさなかった点である。武部農相は、彼を罷免すべきであった。退職金を支払うなど、論外だ。小泉首相も当然、閣僚を指揮する立場から、そう指示すべきであった。
それができなかったところに、小泉内閣の「政官癒着」が、はっきりと表れている。

今回の武部農相の辞任を拒否する小泉首相と農相本人の理屈は、上記の通りである。これまで職責を全うできなかった。その結果が、今日の野党4党による不信任決議案の提出であった。これまでに職責が全うできず、不始末を招いた人間が、小泉首相の言うように、これからその不始末を解消する方策をとれるものであろうか?それができるくらいなら、もうすでにその方策を実行し、不始末自体発生することさえなかったのではなかろうか?

このようなへ理屈が通用する国は、海外の先進国に他にあるのであろうか?私は、「ない」と断言したい。このような屁理屈が通用する国は、多数の国民が「思考停止」に陥った(あるいは陥らされた)日本以外に「ない」と考える。もうこのようなバカなへ理屈を止めさせない限り、日本の未来に希望はない。いまからでも遅くはない。私は断固として、武部農相の罷免を要求する。これからも、「責任ある立場にある人間は、責任をとらねばならない」、この原則を貫かなければならない。それ以外に、この奈落に落ちかかった日本を救う道はない。
(2002/02/10)

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