the NIKKEI-watcher



コレダケハイワセテ!
Today's Shot



2002/02/05】 
 「改革」


日経新聞朝刊2面に、田中真紀子前外相が4日、小泉首相の施政方針演説の出来映えについて次のように批判したとの記事が載った。
派閥のしがらみ、派閥に羽交い絞めにされて、役人主導を目をつぶって許したのが、今の状況だ。演説で言ったことの実現は、政治改革をしなければ、不可能に近い。

実は田中前外相は、これに近いことを以前しゃべったことがある。
昨年の11月、ニューヨークで開かれた主要8カ国外相会合と国連総会への出席を与野党国対委員長会談で拒否された田中外相が、小泉首相に相談に行って「与党にだけでも頭を下げれば」との助言を受け、自民党の大島理森国会対策委員長を訪れたことを記者団に公表したことで小泉首相から、「あんまりペラペラ人が言ったことを、しゃべるもんじゃない。しゃべっていいこと、しゃべらない方がいいことがあるんだ」と思いもかけず高飛車に注意されたことを受け、11月9日の日経朝刊2面が田中外相の怒りを次のように報じた。
人事課長を代えなければ、小泉首相は構造改革と言っているが、ダメでしょうね。

田中前外相は、なにも変わっていない。当時語った印象を、同じように今回も語った。外務省の斎木人事課長も、いまだ同じ職位にある。違ったことは、田中外相が、小泉首相に更迭されたことだ。しかも明確な理由なく。田中外相の「派閥に羽交い絞めにされて」の言葉が、如何にも真紀子さんらしい。その言葉で精一杯、小泉首相への嫌味を表現しているのであろう。

この田中前外相の皮肉に対抗する積もりは毛頭ないのであろうが、この日の日経夕刊2面に、川口順子新外相が5日の閣議後の記者会見で、来週をメドに外務省改革の基本的な考え方などを盛り込んだ「骨太の方針」を策定する意向を表明した、との記事が報じられた。
キーワードとして、
@改革を実行する過程をオープンにする「
透明性
A期間を切って改革を実行していく「
スピード
B実際に改革の効果がある「
実効性
の三点を挙げた。外相は閣議後、小泉純一郎首相に説明し、了承を得た
』とのことである。

川口新外相が有能な人材であることは、昨年7月の地球温暖化防止ボン会議における手腕を見れば、言を待たない。しかし同氏はまた1月30日の参院予算委員会で、民主党斎藤つよし議員の「小泉首相の”涙は女の武器”発言をどう思うか」との質問に対し、「私は素晴らしい男性の前で涙を流して”それは女性の武器だ”と一度言われてみたい」と語った人物でもある。
だからどうだということではなくて、問題はタイトルの「骨太の方針」である。誰がこんな名前を考え出したのであろうか?川口外相以外の人物であろうか?このタイトルだけで外務省改革は無理だと感じる国民は、おそらくかなりの数に上るのではなかろうか?これは余りにも竹中平蔵経済財政担当相が中心となって昨年6月に発表して以来、現在に至るまで何をやったかやらないのかよく分からない、小泉政権の「骨太の改革」を思い出させてしまう。川口外相が取り上げた三つのキーワード「透明性」「スピード」「実効性」は、そのまま十分に小泉政権に対する皮肉として通用することに笑ってしまう。

NIKKEI NETが、『外務省が5日、経費の水増し請求などで過去6年半に約2億240万円を蓄えたプール金(裏金)の各課室別の内訳を公表した。各課室別の内訳は、同省が昨年11月にまとめた調査結果には盛り込まれなかった内容。公表
に踏み切ったのは、国会審議で与野党が詳細な資料の公開を求めていたことに加え、公開の直前、川口外相が「
透明性スピード実効性」をキーワードにした外務省改革の「骨太の方針」策定を明らかにしたことに配慮したためと見られる』との記事を流した。

なんと言えばいいのだろうか?皆さん、例の野上事務次官は、後任人事が決まるまで従来通り職務を遂行していることをご存知でしたか?ということは、この発表も、川口外相は彼と相談して出したのかな?こりゃまた訳のわからないことで、田中外相がいみじくも「伏魔殿」と言った理由が、よくわかる気がしますね。

MAINICHI INTERACTIVEが、次のNETニュースを流した。
「さまざまな不祥事が出た。もしまだ皆さん個人が関係していることで何かあれば、今のうちに私まで言ってきてほしい」。川口外相は5日、外務省幹部約100人を前に訓示し、不祥事の自主申告を求める異例の呼びかけをした。外相は「国民の信頼の低下は、皆さんが感じる数倍ある」と省内の綱紀粛正を促し、課長補佐級以上の省職員に、署名入りの省改革案を記したリポートを提出するよう要請。不祥事の自主申告を求めた上で、「その後もし出れば、厳しく判断して対応する」と事後発覚には厳正対処する考えを強調、ニラミをきかせた。職員には「わかりやすい」と公表だったが、「不祥事を自主申告したからといって処分されないということはないんだろうな」という声も聞かれた。(浜名晋一記者)

これまでの不祥事は、すべて司直の捜査過程において明るみに出てきたものではなかったろうか?外務省内では、自主申告どころか、不祥事の覆い隠しが常態化していたであろう。おそらくその中心にいたキーパーソンの一人が斎木人事課長ではなかったかというのが、田中前外相の読みであったろう。「清濁併せ呑まねば」外務省の上級職員は勤まらないという話は、これまでの同省に絡む情報を総合すると、如何にも真実のように聞こえる。何にもまして私には、誰がつけたか知らないが、「骨太の方針」という安直な名づけが、どうしても引っ掛かってしようがない。

この日午後、衆院本会議に民主、自由、共産、社民の野党四党の提出した武部農相に対する不信任決議案は、否決された。私はこの採決を、日本の議会、議員とその後押しをする世論の健全性を示すバロメーターとして位置づけていた。2000億円に上るという狂牛病対策費支出を余儀なくさせる農水省の責任は、熊沢元事務次官が辞任したこと以外、今日に至るまで一切とられていない。そんなことで、小泉「改革」はできるのだろうか?
田中前外相は、すでにその答えを二度にわたって語っている。「ダメでしょうね」と。私も同感だ。
「責任をとれない人間は、責任ある地位に着くべきではない」というのが、私の基本原則だ。

日本の行政は、腐っている。この農水省の狂牛病対策の実態を知れば、誰もがそう思う。なぜだ?答えは簡単である。過ちが見つかったときに、責任ある立場にいた人々が、責任を問われてこなかったからである。今日という日も、日本のその悪しき伝統に不名誉な一ページを付け加えた日である。
不信任決議案が否決された後、反対投票をした与党の中から、フツフツと「武部農相辞任すべし」の声が湧き起こってきたのも、このようなことをしていては、次回の選挙で国民から手痛いしっぺ返しがくるかもしれないという憂慮からであろうか?しかしながら、不信任案に反対しておきながら、終わった直後に「辞任」を求めるという与党のいつもながらの猿芝居を見て、笑っている国民はどれほどいるのであろうか?

外務省の件、そしてこの一件、さらにこの日の重要問題の一つであった「医療費3割負担」をひとり声高に唱える小泉首相を見てきて、私はなんとなくこの男の全容がつかめてきた気がする。この男、小泉首相の本質は、次の三つの特徴で表されるのではなかろうか?
@橋本(竹下)派への怨念
A官僚への依存
B軍国への懐古
小泉首相にとって、官僚は「聖域」である。外務省の件、農水省の件、そして財務省官僚のアイデアである「サラリーマン本人の医療費自己負担3割への引き上げ」に対する異常なる固執。医療機関の診療報酬の引き下げは、この3年デフレの続くご時世に、あたりまえの話である一方、患者3割負担は、医療保険制度赤字補填の意味を持ち、国の財政赤字補填のために消費税を引き上げるという発想と同種のものである。いずれも大局的問題解決策に取り組まず、目先の数字合わせにだけご立派な頭を使ってきて、その結果国債の乱発により莫大なる財政赤字を溜め込んだ財務省の発想であり感覚である。小泉首相がなぜ、官僚の天下りの規制に甘いのかということも、この点から考慮するとつじつまが合ってくる。

最後にどうしても取り上げておかなければならないことが、もう一つある。それは、日経夕刊の2面に報道された。
5日の閣議後の記者会見では、軟調な株価への懸念とともに、銀行への公的資金注入を巡る発言が閣僚から相次いだ。平沼赳夫経済産業省は「現状は銀行に公的資金を導入する危機的状況ではない」としつつ、「日経平均株価9000円くらいを想定して一つの設計図がある」と言及。9000円を割り込む状況になれば公的資金の再注入を含めた政策対応をすべきだとの認識を示した。

今日(5日)の日経平均株価の終値は、9475.60円であった。9000円までは、あと525円である。下手すれば、一日で下がるような値幅である。もう公的資金注入は、目前だ。平沼経産相は、市場によい目標を与えてしまった。明日から市場はこの目標を落としに行く。それが市場の暴力というものだ。公的資金注入のためには、政府は「金融危機宣言」を行なう形式を取るのであろうか。もうカウントダウンは始まっている。いったいその先には、何が待ち受けているのであろうか?
(2002/02/05)


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