the NIKKEI-watcher

<Taka remarks>

石原慎太郎氏
  
「ホテル税」
ことの何たるかをよく理解せず、だれに知恵を付けられたのか。恥をかくのはてめえの方だ!



11月3日の日経新聞朝刊31面に、次の記事が載った。
東京都の石原慎太郎知事は2日の記者会見で、来年度の都税収入について「今年度に比べ3千億円から4千億円と大幅に落ち込むことが懸念される」との見通しを示した。その上で今後本格化する来年度の予算編成作業に関して「今が財政再建のまさに正念場で、各局の予算要求額で削るべきものは徹底して削るよう財務当局に指示している」と述べた。

だからという訳でもあるまいが、いや、だからというべきかもしれないが、これまた日本の人気者のひとり石原慎太郎東京都知事が、矢継ぎ早にいくつかの法定外目的税の導入を打ち出している。東京都単独で新規導入を目指す「ホテル税」と、首都圏新税として広域行政を目指して首都圏サミットの場で提案した「大型ディーゼル車高速道路利用税」「産業廃棄物税」である。「ホテル税」は、全国の知事の間で激しく賛否両論を巻き起こし、首都圏新税に関しては、周辺自治体から都合の良い時だけ広域行政を持ち出すとの批判も出ている。私は、この2種類の新税は、内容的に意味合いが違ったものだと了解する。
すなわち、「ホテル税」の導入には疑問を持っており、他の2税の導入には肯定的である。

<日経新聞見出しから追うコトの経緯>
11月3日朝刊12面   「ホテル税」都が導入へ
11月5日夕刊2面    都の「ホテル税」を鳥取知事が批判
11月6日朝刊33面   [都観光事業審]「ホテル税」導入に賛否
11月7日朝刊33面   「首都圏新税」導入、埼玉県知事は慎重
11月8日夕刊15面   「ディーゼル車税」首都圏で導入を
11月9日朝刊37面   「ディーゼル車税」など都知事提案[首都圏サミット]
11月10日朝刊31面  「ホテル税」で舌戦
     〃         「産廃税」など共同実施「温度差あっていい」石原知事

東京都の石原慎太郎知事は11月2日、地方自治体が独自に課税する法定外目的税として「ホテル税」を導入する、と表明した。新税の条例案は12月都議会に提出され、条例成立後、総務省との協議を経て来年6月のサッカーワールドカップ(W杯)前後の導入を目指すという。

<税収の使い道>
観光振興に限定し、次のようなものを想定しているという。
○宿泊施設のバリアフリー化。
○外国人観光客向けの案内所設置、地下鉄案内図と施設割引券などがセットになったカードの配布。

<税の内容>
都内のホテル・旅館の1万円以上の宿泊者から一人一泊100円(1万5千円以上は200円)を徴収する。

<税収見込み>
課税対象のホテル・旅館は120。
税率100円の課税対象者は一日平均1万9千人、200円は1万1千人の計3万人。
税収見込み・・・・・年間約15億円

同日の記者会見で石原知事は、「行政が観光振興に積極的に取り組むよすがになる。ホテル業界などとも話して観光に関する目的税として了解をいただいている。料金1万円以上の宿泊客に限定したことで、大衆課税にならないよう配慮した」と述べた。

<都内のホテル、旅館などの反応>
これに対し、都内のホテル35社が加盟する日本ホテル協会東京支部の松井幹雄支部長(ホテルオークラ社長)は、「突然の発表に驚いている。観光振興という使用目的もよく理解できない」とのコメントを発表した。都内の旅館やビジネスホテルを中心に組織する東京都ホテル旅館生活衛生同業組合のばん桂華副理事長は「(実行ある観光振興策が実施されるかどうかわからない状況で)まず課税ありきというのでは不安と不満がある」としている。ホテル業界では料金に対して3%を徴収していた特別地方消費税が昨年3月末で廃止されたばかり。

<都観光事業審議会>
東京都は5日、観光事業審議会(会長・岡本伸之立教大観光学部長)を開き、都が先にまとめた観光産業振興プランについて意見を聞いた。冒頭、波越勝海産業労働局長が「ホテル税」について次のように説明した。
この税を活用することで多くの旅行者の誘致が可能となり、運輸や宿泊、飲食業など多くの産業を潤すことになる。
一部の委員から、『観光振興は東京の高コスト構造をどう改善するかが課題だ。「ホテル税」は経済的な負担になる。都民などの意見を聞きながら慎重に進めていくべきだ』との声があった。
税の使い道については『五カ国語、24時間対応の旅行案内所やJRや地下鉄の乗り放題チケットなど、(税を)百円払っても安いと感じるぐらいの施策の工夫が必要だ』『宿泊施設の耐震性向上など観光の安全のために使うことも考えてほしい』といった意見が出された。

<片山鳥取県知事の反論>
鳥取県の片山善博知事は5日の定例記者会見で、東京都の石原知事が導入を表明した「ホテル税」について、『法定外目的税は本来の住民に負担を求め地域振興を図るもので、住民以外に求めるのは他人のふんどしをあてにした、取りやすいところから取る税という感じがする』と疑問を投げかけた。さらに石原知事の首都機能移転反対の考えに関連して、『地方の人は中央政府などがあるから大半が仕事で東京に集まるのであって、(新税は)首都を抱えている自治体の自覚がない。東京は込み合っているから多くの人に来てほしくないというメッセージなのだろうから、全国的な会議は東京でやらないでほしい』と批判し、今後国や他県の知事らにも同調を呼び掛けると述べた。

また佐賀県の井本勇知事も8日、『東京に行かないと済まない仕事がある。東京以外の人に税金をかけるというのはいかがなものか』と疑問を呈した。
一方、大阪府の太田房江知事は『米国などでも課税されており、一つのアイデア』と理解を示したほか、井戸敏三兵庫県知事や麻生渡福岡県知事らは、『自治体による課税自主権の活用法の一つ』などと評価した。

<石原都知事の反発>

東京都の石原慎太郎知事は9日の記者会見で、都の独自課税「ホテル税」に反対する他県知事を、『(反論は)ナンセンス』と切って捨てた。特に石原知事がヤリ玉に挙げたのが、鳥取県の片山知事。
ことの何たるかをよく理解せず、だれに知恵を付けられたのか。恥をかくのはてめえの方だ』と痛烈に批判した。

まことに言葉づかいの悪いおっさんだ。それはそれとして、私は、この「ホテル税」には、たいへん重要な意味合いが含まれていると考える。その話をする前に、なぜ私がこの新税に問題があるとみるのか、次に列挙してみる。

@<税の負担者>
この新税の負担者は、東京都のホテル等に滞在した人々ということになる。石原知事は、「ホテル税」導入表明の記者会見で、「ホテル業界などとも話して、観光に関する目的税として了解をいただいている」と語った。これはまことに筋の通らない話である。税の負担者であるホテル等の使用者に一言の言及もなく、一方的に「ホテル税」導入を決定し、あげくに税の内容から、実施予定から、税収の使い道まで決めておいて後に、導入を表明するとは。
他県の知事が『東京以外の人に税金をかけるというのはいかがなものか』と疑問を呈しているのも、税の最終負担者に対して一言の話もなく新税導入を決定した東京都への不信感の表れとも受け取れる。

A<観光振興が目的>
「ホテル税」は法定外目的税である。目的は、観光振興だそうだ。だれがそれをやってくれと、東京都に頼んだのであろうか?上述の日本ホテル協会東京支部の松井支部長の『観光振興という使用目的もよく理解できない』という言葉で明らかなごとく、東京都は、頼まれもしないことに乗り出して、挙句その為の源資にと「ホテル税」を導入しようとしている。観光振興とは、新税まで導入して東京都が乗り出すべきものなのであろうか?都の波越産業労働局長は、『この税を活用することで多くの旅行者の誘致が可能となり、運輸や宿泊、飲食業など多くの産業を潤すことになる』という。タイミングをW杯に合わせて導入するというと如何にももっともらしく聞こえるが、この「ホテル税」の使い道は上述した通りである。宿泊施設をバリアフリー化し、外国人観光客向けの案内所設置、地下鉄案内図と施設割引券などがセットになったカードの配布が、『運輸や宿泊、飲食業など多くの産業を潤すことになる』というのは、チト大げさ過ぎやしませんか?ましてやW杯終了後はどうなるんですかね?

B<目的税の本質に馴染まず>
片山鳥取県知事が指摘したように、地域住民以外を含むホテルの滞在者のみを課税対象とする「ホテル税」は、地域振興を図るために地域住民全体に負担を求める法定外目的税の本来の趣旨に沿わないと考えられる。同じく石原知事提案の首都圏新税「大型ディーゼル車高速道路利用税」「産業廃棄物税」と決定的に違うのは、後者ははっきり課税対象案件が地域住民にいわゆる公害をもたらしているところである。観光振興のどこが地域住民に公害を及ぼしているか?Aで指摘したように、観光振興などは、なにも新税を導入してまで東京都が乗り出すべき対象ではないはずである。

石原慎太郎都知事は、来年度の都税収入が大幅に落ち込むことが懸念されると語っている。これは東京都だけの問題ではない。日本全国どこへ行っても景気後退、株価下落により、売上、収益が大幅に落ち込み、その結果として税収が減少しているのである。もしこのような背景の下に新税を導入してなにがしかの財政赤字補填の足しにしようという考えであれば、とんでもない話である。まったく住民の感知しないところで種々の法定外目的税が新規導入されていったなら、財政規律のモラルハザードは火を見るより明らかである。東京都は、赤字財政を改善する為の構造改革、支出削減、意識改革すべてのことをやり遂げたのであろうか?不夜城の如き聳え立つ都庁の建物と、迷路の如き地下通路を張り巡らせたその財政を、せめて不景気で苦しむ民間企業並の水準まで改善していただかねば、観光振興などというとぼけた内容の支出のために新税を導入するなどということは、断じて許されるべきものではないはずだ。

いま日本の行政は、既得権益という甘い蜜に群がるシロアリ共の既存システムによって、如何ともし難いほど食い荒らされてしまっている。そういう既得権益のシステムがどのようにして構築されてきたのかというプロセスを、我われは、今回の「ホテル税」により窺い知ることができる。観光振興であれば、規制緩和とか、事務の合理化、迅速化など行政のできることは他にもあるはずだ。にもかかわらず、必然性のない新税が住民の知らない間に決定された。新税を導入し、これを観光振興を目的に予算配分するにあたっては、必ずや新たな利権の温床が生まれる。そして予算を消化するために不必要な五カ国語の案内板とか24時間観光案内所がいくつも設置され、一部の金が政治家に流れたり、行政担当者の私的流用に回ったりするのが、目に見えるようである。
上記の理由により、石原慎太郎都知事が導入を表明した「ホテル税」は、白紙に戻されてしかるべきものと考える。
石原慎太郎都知事、あなたが片山鳥取県知事に対して言った侮蔑的な言葉は、天につばするようなものだ。そっくりそのままあなたご自身に降りかかってくるに相違ない。
(2001/11/11)
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