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<Taka watches>
「需要予測の誤り」
DATE・・・・2001/09/05(M-1)
記者 ・・・・編集委員 関口和一
TITLE ・・・”株価急落と日本経済(2)”/IT不況はITで断つ
評価 ・・・・B
米国ネット株バブルがなぜ崩壊したかの理由について明確に語った記事には、なかなかお目にかかれない。しかし関口記者の本文は、まさにその核心を突いていると思われる。惜しむらくは書いた当人が、それに気づいているとは思えないことだが・・。
『世界経済のけん引役としてもてはやされてきたIT、それが「不況の元凶」とまでいわれるようになった。好況が続いたパソコンや半導体などの情報通信産業が、1年の間になぜこうも変わってしまったのか』関口氏は、自らの質問に対する答えとして、米ベンチャーキャピタリストの増田茂氏の『おそらく2000年春のネット株暴落で市場がIT革命の実態を理解したから』という解説を取り上げている。『ネット株の代表銘柄、米アマゾン・ドットコムが第1四半期の決算発表で前年同期比5倍もの赤字を発表、これを機にネット株全体が売られた。』アマゾン・ドットコムは、過去何年もその赤字をものともせぬ拡大志向経営で名を馳せたネット株の代表企業であり、IT景気の落ち込みにより赤字幅が大きくなり株価が下がるのは予測の範囲内のことで、それがネット株暴落の原因になったとは考えられない。ではなぜネット株は暴落したのか?バブルがはじけたから?なぜバブルははじけたのか?・・・
関口氏は、『「春先まで第三棟の建設計画があったのに」知らせを聞いた市の商工課は今も驚きを隠せない』という文章から記事を書き始めている。『東芝は8月、1万7千人の人員削減策と三重県四日市市の半導体工場の一部操業停止を発表した。同社の半導体事業は2000年度に1千億円を超える利益を計上したが、今年度は940億円もの損失に陥るという。』
この東芝と上述のアマゾン・ドットコムに共通なのは、両社とも「需要予測」を誤ったことである。この「需要予測」の誤りの一例を取り上げ、『携帯電話需要の見込み違いも追い討ちをかけた』と関口氏は述べている。
『一般に登場してからわずか7年で年間4億台を売る商品に育った携帯電話に対し、今年は5億台の需要を当て込み、各社が増産したが、実際は前年止まり。』また、いま流行のブロードバンドについても取り上げている。『基幹通信網の光ファイバーや通信設備は、ブロードバンド(高速大容量)通信の需要拡大をにらみ、年率5倍のペースで容量が増大した。ところが実需は年率2倍しか伸びず、稼働率は今も10%にも満たない。』
関口記者は、「IT不況」をこう定義づけている。私もまったく氏の考えに同感である。『(需要予測を誤った)結果、情報通信産業の各分野で過剰在庫と余剰設備が顕在化した。情報革命への期待が株式市場を媒介に膨れ上がり、膨大な仮儒を生み出した「ITバブル」。それが実体経済を巻き込み逆回転し始めたところから「IT不況」が出現した。』
関口氏は続けて、米国市場に電子部品等を供給してきた日本の情報通信産業が、「IT不況」の直撃を受けたことに触れ、『日本の情報通信産業の市場規模は情報サービスなどを含め約30兆円。自動車の40兆円には及ばないものの、その失速は日本経済の大動脈を大きく損なう結果となった』と述べる。
ここから残念なことに、日本のMass Media、ジャーナリストに有りがちな、”明るい面を探そう運動”が始まる。物事をより深くより客観的に分析するために楽観・悲観両面から考察する、という意味での”明るい面を探そう運動”であれば、私も大賛成なのであるが、単に情緒面に重点の置かれた、敗色濃厚なれど日々元気に暮らそう的な”明るい面を探そう運動”は、物事の根本から目をそらせ解決を遅らせるだけ、という意味から私は賛成できない。
『電子部品などの輸出は大きく落ち込んだが、国内の一般企業による情報化投資意欲は依然として旺盛だ。ソフトやサービス部門の収益は堅調で、採用の動きも強まっている。』
『携帯電話分野ではNTTドコモが高速のデータ通信ができる第三世帯携帯サービスを10月から開始すると発表した。サービスが本格化し、その利便性が消費者に認められれば、移動通信の新しい需要や利用法が広がる可能性は高い。』
文頭の東芝、アマゾン・ドットコムのケースを思い起こしてほしい。それは中には確かに今日においても、日本IBMの如く、仮儒に翻弄されずしっかり経営している企業もあろうが、それはあくまでも例外と見るべきであろう。
巨額の財政赤字と景気回復のはざ間でニッチもサッチもいかなくなり株価の1万円割れが視野に入ってくる一方、世界同時不況が現実のものとなりかかっているこの時点において、このような情緒的”明るい面を探そう運動”はやめるべきだ。そのようなことに時間を浪費していると、”物事の本質”はいつになっても掴めない。
だから関口記者の本文における結論もこうなってしまう。
『株式市場と情報通信産業のバックスピン(逆回転)がもたらした悪循環に歯止めをかけるには、IT分野の競争力をもう一度高めるしか方法はない。そうでなければ一連のリストラは単なる縮小均衡に終わる。』
あまりに貧しい結論である。せっかく途中まで論理的に分析を進めていながら、なぜか突然情緒的”明るい面を探そう運動”の脇道にはまり込んでしまった結果が、この貧しい結論になってしまったと言わざるを得ない。”明るい面を探そう運動”は、統治能力は欠如しているが別の知恵は回り過ぎるぐらいに回る政治家連中が、”物事の本質”が暴き出されて自分らの既得権益が侵されることになるのを恐れて仕掛けた、ある意味で策略の一つであると私は了解している。Mass Mediaと多くの記者連中が、意識するしないは別として、そのお先棒を担いでいる。
関口氏の結論に対して、私が「米国および世界は、日本のIT分野の将来性をすでに見切っている」と宣言しては、あまりにも過激な発言となろうか?唯一、米国の景気回復と株価の回復に日本の景気回復の望みを託している、政治家・官僚・経済学者・企業経営者・Mass Media関係者を含む数多くの日本人の期待に反して、米国の株式市場は一向に下げ止まる気配をみせない。この事実が、私が「米国および世界は、日本のIT分野の将来性をすでに見切っている」と考える有力な証明である。
”物事の本質”、そう、”なぜ米国のネット株バブルははじけたのか?”だ。
米国のIT企業は、「需要の予測」を誤った。これは関口記者の言うとおりである。では彼らは、どの部分の「需要の予測」を読み誤ったのであろうか?ここに先ほどの日本の”明るい面を探そう運動”が登場する。日本のMass Media、記者連中は、”明るい面を探す”のがことのほか上手である。日本のMass Mediaにおいては、やけに自分たちに都合の良い楽観的な記事やら見通しが、日常茶飯事的に踊っている。企業経営者もまた同様である。
上記に引用した関口記者の日本経済の”明るい面”を取り上げた記事を、いま一度読み直していただきたい。この記事を一読した読者は必ずや、日本経済も見捨てたものではない、もうしばしの我慢で必ず浮上するであろう・・こう思うに違いない。東芝ですら「需要予測」を読み誤った。関口記者も強調しているではないか『日本の情報通信産業の市場規模は、自動車の40兆円に次ぐ約30兆円』だと。外国企業が、日本のMass Media、政治家、企業経営者らの流す楽観的見通しに踊らされて、世界第二位を誇る経済大国日本の「IT需要の予測」を読み誤ったとて、誰も批難することはできない。
そう、米国のIT企業は、日本の「IT需要の予測」を読み間違えて、決定的な過大投資を行ってしまった。このことと、INTERNETのスピリットとまったく相反する、時計の針を逆回転させるような米国Bush政権の政策とが相まって、米国ネット株バブルははじけてしまった。これが私の見解であり、実は私の懸念でもあったので、特に「Japan Problem」「Bush Problem」として取り上げてきたものである。
グリーンスパンFRB議長は常々、「米国一国では、そうそういつまでも世界の景気を支えられない」と言ってきた。9月6日付朝刊1面”株価急落と日本経済(3)”は、『米当局者らが1990年代半ばに描いた世界経済の軟着陸シナリオの実現は遠のいた。IT好況に沸く米国が世界経済を支えているうちに第二の経済大国の日本が成長力を回復し、先進国間でバランスのとれた成長に移行する「拡大均衡」に成功するはずだった。だが日本経済が立ち直らないうちにエンジン役の米経済が息切れし、主要先進国で成長率が低下する「縮小均衡」に向かっている。米国の過剰なほどの消費・投資が支えた世界経済の「不均衡下の安定」は崩れ去った。』
INTERNETの本質は、@世界を一瞬のうちに一つにしてしまうグローバル化A物事の、一部による私有・独占から個人・市民レベル単位への移行B短時間での多面的大量の情報収集と過去の大量の情報蓄積が可能、という点にあると了解する。それと、二進法というコンピュータの特性からくる、論理的でないことすなわち”あいまいさ”の忌避という問題点がある。
なぜ日本で、NTTおよびそのグループは通信コストを引き下げないのか?という論点以前に、日本の社会と日本人の特性が、上記に述べたINTERNETの本質4点とまったくかみ合わないどころか、ほとんど相反しているといって過言でないことに、読者のみなさんはお気づきであろうか?
日本は「神の国」だと、前首相は語った。これは、世界の中で、日本は特殊な国なのだということを言わんとしているものである。その精神は、INTERNETの持つ、世界をグローバル化するその本質と相反する。国民あるいは個人が中心ではなく、国や企業が中心であり、往々にして国民や社員が国や企業から犠牲を強いられる日本の社会構造は、INTERNETの持つ、物事の個人・市民レベル単位への移行促進という本質と相反する。情報を出し渋るのは、単に日本の行政だけの問題ではない。また情報収集の面においても都合の良い情報だけを収集するというような情報管理が見られる。先に述べた情緒的”明るい面を探そう運動”は、まさにその一例である。と同時に、過去の情報がほぼ完全に無視される、竹中平蔵経済財政担当相いうところの”日本人の水に流す体質”がある。これらは、INTERNETの持つ、短時間での多面的大量の情報収集と過去の大量の情報蓄積が可能というその本質と相反する。さらに、日本人の好む”あいまいさ”、”玉虫色の結論”、”長い待ち時間”といったものはすべて、”あいまいさを排除し、瞬時に結論を出す”コンピュータの特性と相反するものである。
結論を申し上げれば、現在の日本および日本人のシステムそのものが、IT革命を進める上で障害となっている。日本のMass Media、政治家、企業家等が、いくら日本のIT産業の”明るい見通し”を吹聴したとて、常に現実の日本はその方向に動いて行かない。そこを米国のIT企業は見誤り、いま彼らは日本を見切ろうとしている。米国のIT産業が、組み入れていた日本の仮儒部分を切り捨てた経営体制への転換を完了した時、米国株は底入れするであろう。
日本および日本人が、既存のシステムを変えていかない限り、IT革命において日本が享受できるのはハードとゲームソフトの供給にとどまり、IT革命における後進国の汚名を晴らすことは至難であろう。
9月9日の日経新聞朝刊5面”寸言”が、5日、第三回日経フォーラム「世界経営者会議」の特別セッションで米シスコシステムズのチェンバース社長と対談した出井伸之ソニー会長が「日本を”IT不況”というのはおこがましい」と言った話を取り上げ、次のように伝えている。
『(出井会長は)「本格的ITに移行できていない日本と、第一次のIT革命を終えた米国を同列に考えるべきではない」と警鐘を鳴らした。政府のIT戦略会議本部のメンバーとして国内の情報通信インフラの貧弱さと、ITを使いこなせない企業の多さを知り尽くした出井氏ならではの危機感の表れか。会場を埋めた聴衆は、一段と話に引き込まれた感じだった。』
(2001/09/09)
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