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<Taka watches>
DATE・・・・2001/05/13(M-3)
記者 ・・・・編集委員 末村篤
TITLE ・・・”News反射鏡”/小泉改革見守る株式市場/株価対策より市場改革を
評価 ・・・・A
末村氏は、日本の実態にかなり踏み込んだ記事を書くジャーナリストであると常々感じている。しかし一方で、彼はおそらく”知り過ぎている”ことによる報道の空しさもまた、相当程度味わってきたのではなかろうか?末村氏が何年も前から取り上げてきた正論をかつては無視してきた多くの人々が、今や先を争ってもっともらしい顔で自らの主張として述べ、しかもそれが参院選前のほんのひと時の隠れ蓑であることが透けて見える昨今の世相を観ていると、ついつい正論をストレートにではなく、多少皮肉を利かせて表現してみたくなる気持ちはよく分かる。ただそのようなケースでは、作者が思考をひと捻りしている間に、結果的に内容が異質のものとなってしまう場合が往々にしてある。
記事の前・中半において、末村氏は盛り沢山の彼らしい(他の大部分の記者には見られない)断定的な予測を述べている。
『米株式市場は(現在は)景気動向待ちの状態と見るべきだろう。米経済の調整は長く深いものになる可能性が大きい。』
『(米国の)家計の消費性向の低下と財政の悪化は以外に早く訪れ、1990年代に上昇し続けた企業の資本効率(ROE)が長期低落過程に入るという見方には十分な説得力がある。』
『ナスダック銘柄の下げ余地は限られても、未調整のダウ工業株30種平均株価に代表される伝統的企業の株価調整があると見るのが自然だろう。』
『日経平均でバブル崩壊後の最も低い株価水準からスタートした小泉内閣へのご祝儀相場の持ち時間は多くはない。』
『実体経済は厳しさを増しつつあり、企業業績も今期は増益率の鈍化だけでは収まらず、減益になることも覚悟する必要がある。』
『構造改革のスローガンにどう肉付けするかを問われる場面は直ぐそこにある。』
要は末村氏は、米国経済の調整は長く深いものになり、このため家計の消費性向は低下し、財政は悪化し、企業のROEは長期低落過程に入る可能性が強く、オールドエコノミー銘柄はもう一段の下げが予想される。かたや日本の株式市場も、小泉内閣の構造改革のスローガンが掛け声倒れに終わるようなことがあれば、企業業績の減益への転換もあり一段の下げに見舞われるまでの持ち時間は長くない、と彼はこう言っているのだ。これは、米国の景気は今年後半から回復に向かうという、日本の多くの人々の甘い期待に冷水を浴びせる予想ではなかろうか?
上記は、もっともらしい顔で財政改革、不良債権処理促進を口にし始めた連中が、内実は今年後半からの米国経済の回復を当てにしていることを見抜いた末村氏が、多少シニカルに断定的な調子で悲観的な側面をあばき出したものであるが、問題はこの記事の最後のまとめの部分にある。
『(日本は)株式相場の再下落への備えを怠れず、「株価対策」ではない株式市場の構造改革の設計図が必要だ。自民党の大原一三衆院議員が小泉首相にあてた「構造改革私案」は大筋で正鵠を射ている。その二本柱は、銀行の株式保有制限(持ち合い解消)と土地の資産再評価である。』
末村氏は、株式市場の危機の本質を、@資本の規律を欠く企業経営 A収益力を無視した株価の正常化への生みの苦しみの二点に置き、大原衆院議員の「構造改革私案」にある”銀行の株式保有制限”が@の是正に有効で、”土地の資産再評価”がAに有効であると考えている。果たしてそうであろうか?
金融機関が持ち合い株を市場に放出して、市場がそれを自然体で消化できればベストシナリオであるが、そうも行くまいということで「銀行保有株取得機構」の創設が先の緊急経済対策で決定したのではなかったか。株式市場にとっては、銀行が持とうが取得機構が持とうが、同じ意味合いではないか?銀行はそれでも民間企業だが、取得機構は公の機関であり、当該企業への目配りという観点においては、銀行の方がまだマシだとさえいえよう。”持ち合い解消”は、”株式市場の構造改革”ではなくて、金融機関の構造改革というべきであろう。
また土地資産の再評価は、企業にとっては単なる一時的損益である。健全な株式市場においては、結果として株価に反映される企業を測る物差しは、その企業の本業(今後そうなりそうなものも含む)の業績見通しのみである。
日本の株式市場の危機の本質は、そのような銀行が大量の株式を保有しているとか、土地の評価損益が企業の決算書に正しく表れていないとかではなく、大口株主である銀行が、企業の資本効率を無視した経営に対し何も言わないとか(なぜなら日本には一般的に、企業は株主を軽視し、大口株主は企業の経営に口を挟むのを遠慮するという風習がある)、談合あるいは暗黙の了解により市場に自由競争原理が働かないため土地価格が適正に評価されないといった、日本の経済社会における日本的体質そのものの中にあるのではないか。
Stock markets/the Japanese stock market
そして末村氏は、そのようなことはすべて先刻承知しているはずだ。ただ、たまたま、米国景気の回復をみえみえに待ち望んでいる口先だけの構造改革・不良債権処理促進派に対し、サビの利いた一文を書いてやろうと一捻りしているうちに、論点が逸れてしまったものと了解している。(2001/05/17)