the NIKKEI-watcher


Japan Problem/日本の財政赤字

日本国債の謎」

 「日本国債のXデー」





日本経済のすべては「国債」に凝縮される。この言葉を奇異に感じる人たちが、少なからずいるに違いない。私は、 Japan Problem/日本の財政赤字/「日本国債の謎」 の冒頭でこう書いた。「日本国債が政府によって問題なく発行され続けるかぎり、日本経済の抱えるすべての問題は、真の問題には成り得ない」と。誤解のないようにしてほしいが、これは日本経済の抱えている問題が大した問題ではない、という意味ではない。重大な問題が山ほどあるし、今後もあるであろう。しかし、日本政府が滞りなく国債を発行し続けられるかぎり、日本経済の抱えるいかなる困難な問題も、真の問題とは成り得ないということだ。すべては国債とともに先送りされ、「国債発行残高」の一点に凝縮される。それは、2000年度末で364兆円、現時点では380兆円を越えているという。そして、その日本国債に衝撃が・・・・・。


<フィッチ>
11月26日の日経新聞夕刊2面が、『英米系格付け会社フィッチは26日、日本政府が発行・保証する長期債務の格付けを「ダブルAプラス」から「ダブルA]に一段階引き下げたと発表した』と報道した。
政府債務の増大やデフレの深刻化、構造改革の停滞』などを格下げの理由に挙げ、『格付けの見通しを示すアウトルックを「ネガティブ(弱含み)」とし、さらなる格下げの可能性を残した』という。今回の格下げで既に「Aa2」(ダブルAに相当)に格付けしている米ムーディーズ・インベスターズ・サービスと同じ段階の格付けとなった。
またフィッチは同日、上記日本国債の格下げに伴い、『景気低迷や財政悪化により銀行に対する政府の支援能力が弱まっているため』との理由から、四大銀行グループおよびあさひ銀行、横浜銀行などの長期債務格付けを引き下げた。


<S&P>
11月26日発表の、日本道路公団の長期発行体格付けの「ダブルAプラスから「ダブルA」への引き下げと、さらなる格下げの可能性を示唆する「クレジット・ウォッチ」の指定に続いて、28日の日経新聞夕刊1面が、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は28日、日本国債の格付けの引き下げを発表したと次のように報じた。銀行の不良債権処理や構造改革の遅れに対する海外の見方は、一段と厳しさを増してきた。記事の内容は次のとおり。

S&Pは、日本政府が発行、保証する債権の長期格付けを、小泉政権が進める構造改革の遅れや、第二次補正予算などによる政府の債務負担の増加を理由として、これまでの「ダブルAプラス」から「ダブルA」に一段階引き下げると発表した。格付けの見通しは引き続き「ネガティブ(弱含み)」で、景気が一段と悪化したり構造改革がさらに遅れた場合、もう一段階の格下げの可能性があると指摘している。「ダブルA」は最上級から二段下の格付けで、米ムーディーズの日本国債格付けと同じであり、主要七カ国(G7)ではイタリアと同じ最低水準。

29日付日経新聞朝刊7面が、S&Pによる今回の日本国債格下げの背景を次のように解説している。
S&Pは今年2月末、日本国債の格付けを最上格の「トリプルA」から「ダブルAプラス」に一段階引き下げてから、わずか9カ月で再格下げに踏み切った。早くから日本に厳しい見方をしていたムーディーズに対し、S&Pは日本の経済力などプラス面を高く評価してきた。しかし、今後の格付け見通しを引き続き「ネガティブ」とするなど従来とは見方を変えたといえそうだ。また日本道路公団と公営企業金融公庫が発行を予定している財投機関債の格付けも一段階下げた。
政府債務の膨張に歯止めがかからず、景気は一段と悪化している。市場では「来年度予算の方向性が見える来年2月にも再び格下げされる可能性がある」(東京三菱証券の三島拓哉チーフクレジットアナリスト)との見方も出ている。28日の債券市場ではS&Pが二段階以上格下げすると予想する向きもあったため、格下げ発表後にはむしろ債券が買い戻され、長期金利は低下した。』


S&Pはさらに同日、日本国債格下げに伴う措置として、主要邦銀11行と農林中央金庫の格付けを引き下げる方向で見直すと発表した。
景気後退懸念が一段と強まっている為今後1,2年は各行の予測より多額の不良債権処理費用を負担する可能性が大きいと判断した。見直し対象はみずほフィナンシャルグループ、UFJグループ、三菱東京フィナンシャル・グループ、三井住友銀行の四大グループ各行と住友信託銀行、農林中金の長期格付け。うち住友信託と東洋信託銀行は短期格付けも対象とした。あさひ銀行、大和銀行、中央三井信託銀行は今回の見直し対象からは外れている。各行とも回収に注意を要する「要注意先債権」を多く抱える中で、融資先の財務状態の悪化が加速する危険性があると指摘している。
また東京海上火災保険の保険財務力格付けを「ダブルAプラス」から「ダブルA」に一段階引き下げ、引き続き格下げの方向で見直すことも決めた。


そして12月4日の日経新聞夕刊1面が、そのニュースを伝えた。

米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは4日、日本政府が発行、保証する国内債券の長期格付けを、「Aa2」から「Aa3」に一段階引き下げると発表した。主要七カ国(G7)でイタリアと並ぶが、格付けの見通しは「ネガティブ(弱含み)」で、もう一段の格下げの余地が残されており、実質イタリアを下回った。「Aa3」は最上級の「Aaa」から三段下の水準で、米S&Pの「ダブルAマイナス」に相当し、S&P社の日本国債の格付けより一段階低い水準とくなった。海外で発行された日本国政府の債務は「Aa1」(ダブルA+に相当)、見通しは「安定的」に据え置いた。
ムーディズによる国債(ソブリン債)格付け (自国・地域通貨建て長期債務)
米国、英国、ドイツ、フランス、シンガポール      Aaa     (AAA)
カナダ                             Aa1     (AAA)
ベルギー                           Aa1     (AA+)
スペイン                           Aa2     (AA+)
イタリア、スロベニア                    Aa3     (AA)
台湾                              Aa3     (AA”N”)
香港                               Aa3     (AA−)
日本                             Aa3    (AA”N”)
チェコ                             A1      (AA−)
ハンガリー                          A1      (A+)
ギリシャ                            A2       (A)
           注: ( )内はS&P格付け。”N”はネガティブ
           −2001年12月5日付日経新聞朝刊3面よりー
5日の日経新聞朝刊3面に、ムーディーズの日本国債格付け担当トム・バーン氏のインタヴュー記事が掲載された。

今後18カ月以内に、日本国債を再格下げする可能性がある。米同時テロ後の世界的な景気後退で、日本経済を成長軌道に乗せ、政府債務を削減することは一層、難しくなった。不良債権問題をいまだに引きずる銀行部門を支えるため、公的資金の投入は避けられない見通しだ。財政悪化が続くなか、政策の選択肢が限られてきた。
極めて困難な状況にあるのは分かるが、政府は銀行の不良債権問題と企業の過剰債務問題に早期に手を打ち、政府債務の膨張を止めるべきだ。政府・日銀がインフレ目標策の導入で合意しても、本当にデフレ脱却に結びつくかは疑問だ。
小泉政権は依然、高い支持率を維持しており構造改革の好機だ。もっとも経済環境が悪いなか、いざ問題解決に役立つ具体的な政策を実行するとなると、大変な困難がつきまとうだろう。それでも有言実行し、投資家に結果を見せるべきだ。

何が問題なのであろうか?ムーディーズによる今回の日本国債格下げが、どのような意味を持ち、今後どのような影響を日本経済に与えるのか?日経新聞4日夕刊3面および5日朝刊3面に掲載された関連記事を参考に、問題点をまとめてみた。

日本国債格下げの理由は

@米同時テロ後の世界的な景気後退で、日本経済も景気低迷の長期化が避けられない。
A問題解決に役立つ効果的な政策対応の難しさから、国債発行の増加が避けられず、財政再建に取り組みにくい。日本の一般政府債務と債務返済の負担が増大し続ける。
B現在進めている経済政策や構造改革による景気の早期回復は望みにくい。
C不良債権問題をいまだに引きずる銀行部門を支えるため、公的資金の投入は避けられない。
Dデフレの加速で実質的債務が増大し、経済全体への信用リスクが高まっている。

今後の格付けの見通しを「ネガティブ」とし、「Aa3」(ダブルA格)から「A1」(シングルA格)へのさらなる格下げの可能性を残したことが、より重い意味を持つ。

国際決済銀行(BIS)のいまの規制では、銀行は自己資本比率をはじく際に国債の信用リスクをゼロにできるが、2005年から導入される新しい規制では、銀行が保有する貸し出しや債券などの資産のリスク掛け目は格付けに応じて判断する方式に変わる。現在は先進国の国債なら掛け目は0%だが、格付け「A1」(シングルA格)の国債は20%をリスクのある資産として分母に加えなければならず、その分、自己資本比率は低下することになる。
日本国債がもう一段階の格下げにより「シングルA」格になると、各国の金融当局は信用リスク(資産のリスク掛け目)を20%まで高める可能性がある。今後海外の機関投資家が日本国債の保有を敬遠する動きも予想される。

9月末の大手14行の国債保有残高は42兆円に達するだけに、国債がリスク資産とされた場合、銀行の経営は圧迫される。

ただし自国通貨建ての国債を自国の銀行が持つ場合は、例外的にリスクを現在と同様ゼロとするか20%とするかの掛け目の決定は、各国政府の金融当局の裁量に任される。

この点では銀行経営への影響はないものの、海外機関投資家などの投資意欲が後退するのは確実な情勢だ。国債だけではなく、邦銀や日本企業の国際資本市場からの調達コストも上昇圧力が強まり、企業業績回復の足を引っ張る要因になりかねない。
12月11日の日経新聞朝刊7面に、『森昭治金融庁長官が10日の記者会見で、2005年実施を目指す新しい自己資本比率規制での国債の取り扱いについて、「自分の国の信用を否定することは考えにくい」と述べた。国債の格下げが続いても銀行による国債の保有リスクを引き続きゼロとみなし、銀行の自己資本比率に影響を与えないようにする考えだ』との記事が載った。

格下げにより日本の銀行は、大量に保有している国債の価格下落など新たなリスクを抱える。

大手各行が現段階で懸念しているのは、格下げで国債の価格が下落し、保有債券の評価益が減ったり評価損が膨らんだりすることだ。メリルリンチ証券アナリストの山田能伸氏は「0.1%の金利上昇(国債価格の下落)で、四大銀行グループの債券(社債含む)評価損益は一グループ当たり30億円から最大で200億円程度悪化する」と試算する。
評価損が出た場合、銀行はその約6割を剰余金から差し引かねばならない。金融庁は「銀行が保有している国債は償還までの残存期間が短く、価格の下落リスクは限定的」としているが、金利動向によっては一部の銀行で配当が難しくなる可能性がある。


銀行経営への影響を懸念し、株式市場では銀行株が一段と下落した。

業種別日経平均の銀行は4日、年初来最低を更新。東証一部の時価総額に占める銀行株比率は7.98%まで下がった。不良債権膨張への不安に国債格下げが加わり、官民の信用リスク上昇が銀行株に波及している。銀行が保有する国債の値下がり懸念も逆風だ。

それでも、銀行は国債を売るに売れない。

企業の資金需要が上向かず、株価も低迷しているなかで国債のほかに資金の運用先を探すのは難しいからだ。このため各行は保有国債を入れ替えて償還までの平均残存期間を現在の約3年からさらに短くするなど、価格下落リスクを減らす対策をとるとみられるが、打つ手は限られている。
全国銀行の国債保有額は、200年度末で70兆円、現時点では80兆円を超えているという。

債券市場の反応は相変わらず鈍かった。

4日の格付け発表の直後も新発十年物国債利回りは1.390%と前日比0.01%低下した。貸し出し減少でカネあまりに直面する金融機関などの国債の購入意欲は根強く、格下げにもかかわらず相場は下支えされている。ただ、海外勢などが日本の政策運営に厳しい見方を強めれば日本国債を敬遠するムードが広がり、長期金利の上昇圧力がじわじわと高まる可能性が強い。

政府の反応は、

塩川正十郎財務相は4日、財務省内で記者団の質問に答え、今回の格下げに関して、『国債の価格維持を経済政策のなかで総合的に考えなければならない」と語り、長期金利が上昇しないように何らかの対策を検討する考えを示した。

そしてXデイが・・・・・

@今後も国債発行の増加は避けられない。
Aにもかかわらず、国債の利回りは1.3%台で安定している。
B大手銀行を中心とし、日銀がゼロ金利で放出する資金で、国債を買いまくっているからだ。
C銀行はわずかの金利上昇によって、保有国債の莫大な評価損を蒙るリスクを負っている。

このような状況下において、ムーディーズによる日本国債の「Aa2」から「Aa3」への格下げが発表となった。しかも格付け見通しは「ネガティブ」とされ、もう一段階の格下げの余地が残された。ムーディーズの日本国債格付け担当のトム・バーン氏は、『今後18カ月以内に、日本国債を再格下げする可能性がある』と明言した。2003年6月が18カ月目に相当する。次にムーディーズが動いた時、日本国債はシングル格の「A1」となる。そうなれば、日本政府や企業、金融機関の資金調達コストが跳ね上がる公算が大だ。日本の格付けは世界一流の水準を維持できるかどうかの瀬戸際に立たされており、小泉政権は今度こそ、景気回復と構造改革を両にらみした綱渡りの経済政策運営を迫られる。時間は最大で18カ月。現実には、市場はそこまで待ってはくれないであろう。

日本国債に、すでに「Xデイ」は設定されたのだ。


日本は、いつまで無節操に国債を発行し続けられるのであろうか?私はこう考える。「日本国債が政府によって問題なく発行され続けるかぎり、日本経済の抱えるすべての問題は、真の問題には成り得ない。」と。銀座を歩く外人は、いつになっても「日本は危機だというが、どこが一体、危機なんだ」と質問し続けるであろう。真の「痛み」を経験しない国民の80%は、いつになっても「中途半端な」小泉政権にエールを送り続けるかもしれない。すべての問題は国債とともに先送りされてしまい、「国債発行残高」の一点に凝縮される。それは、2000年度末で364兆円、現時点では380兆円を超えているという。だが数字は、いつまでも伸び続けるわけにはいかない。なぜなら、日本国債のXデイが、18カ月後に設定されたのだから。
(2001/12/11)


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