the NIKKEI-watcher


Japan Problem/日本の財政赤字
緑青々とした巨木をイメージしてほしい。それを一目見た人々は、その立派さにまさにこれは世界一、二の巨木だと感心する。人々はその巨木の下に群れ集い、これこそ我われの誇りであると称える。
彼らは知らない。その立派な巨木の内部が、外側だけを残して、ほとんど白蟻に食い尽くされてしまっているのを。
もうひと嵐が来ると、空洞になってしまった幹は、その巨木を支え切れなくなるかもしれない・・・。

「やや破局に近い状況だ」
「日本国債の謎」
「痛み」
「税金の無駄遣い
「十字路」


             




やや破局に近い状況だ」



3月8日付日経新聞夕刊第一面にそれほど目立たない扱いではあるが、驚くべき内容の報道記事があった。
宮沢喜一財務相が8日午前の参院予算委員会で、巨額の財政赤字を抱える日本の財政について「やや破局に近い状況だ」と述べたという。ただし、その上で「根本的な財政再建をしなければならない」と指摘し、経済財政諮問会議が作成しているマクロ経済モデルなどを使って、社会保障や地方財政のあり方を抜本的に見直す必要があるという考えを示したというから、財務省の武藤事務次官がその後の記者会見で述べたごとく、「(財務相発言は)言葉遣いはともかく、従来言っていることと軌を一にしたものだ」との見方が正解かもしれない。
ただ、宮沢発言が伝わった同日の外為市場では円売りが活発となり、政府関係者は火消しに追われた。福田康夫官房長官は同日夕の記者会見で、「10年、20年先、今のままで放置すればという前提付きだ。そういうことになっては困るということだ」と述べ、財政の現状を評価したものではないと強調した。

翌9日付夕刊第2面によれば、宮沢喜一財務相は同日閣議後の記者会見で、前日の「日本の財政はやや破局に近い状況だ」との発言について、「用語が不適切だったようなのでおわびする」と述べた。発言の真意については「いつもと違うことを言ったつもりはない。財政構造改革はなかなか大変になる」と説明し、財政再建に向けた取り組みが必要だとの認識を改めて示した。

同発言は海外でも大きく取り上げられたと、9日付夕刊第2面は次のように報道している。
『9日付日本・韓国版の英フィナンシャル・タイムズ紙は、一面トップで8日の宮沢喜一財務相の「日本の財政はやや破局に近い状況だ」との発言を大きく伝えた。同時に経済・金融システムを根本的に変えない限り、日本の経済問題を解決することはできないとして構造改革を強く訴える社説も掲載した。
社説は日本政府が過去10年「締切り間際の対策」を繰り返してきたとし、与党3党が9日に発表する経済対策について「こんなゲームには限界がある」と指摘。日本経済が米景気の減速などで「空中失速の危機にある」との厳しい認識を示し、財務相発言で個人消費がさらに冷え込む可能性を示唆した。』

宮沢財務相は、元来政治家らしくない政治家で、とても正直な人とお見受けしている。彼の発言の趣旨が、「日本の財政はやや破局に近い状況だ」という点にあるのではなく、だから「根本的な財政再建をしなければならない」という点にあることは明らかだ。しかし、だからといって「やや破局に近い状況だ」という言葉が、架空や仮定の話であったとは、とても思えない。彼はとても正直な人だから、やはり一方で「やや破局に近い状況だ」という言葉もまた真実を語っているに違いない。
これは、日本の行政を携わる関係者の内部から初めて公式に発言された、「日本の財政」の危機状況に関するシアリアスな発言であった。彼ら、すなわち行政府関係者は、「日本の財政赤字」の実態について、極力あいまいにしておこうと努力しているように見受けられる。もっとも行政府のこのような態度は「日本の財政赤字」のみに限らず、ほとんどすべてのことに共通なのであるが。
話を戻して「日本の財政赤字」については、ある時はさも深刻そうに、ある時は十分マネージ可能である如く、彼らは得意の二重三重の語り口をみせる。国民のみならず、Mass Mediaも、学者も、果ては日本の首相ですら、「日本の財政赤字」の真の”程度”について知らないのではないかと推測したくもなる。財務省トップのほんの少数のみが、真実を知っているのではなかろうか?宮沢財務相は、大蔵官僚出身で大蔵大臣を何度も経験し首相まで勤めた人物であるから、最新の「日本の財政赤字」の実態について、財務官僚からあからさまな講義を受けていたに相違ない。そして、その余りのシアリアスさに心を痛めていたに違いない。それが、彼が政治家らしくない政治家であるが故に、ポッと口をついて出てきてしまったのであろう。

日本の財政は、「やや破局に近い状況だ」と。

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