
Japan Problem/不良債権処理問題
「緊急経済対策」
4月6日付日経新聞夕刊第一面は、政府・与党が同日午前、首相官邸で緊急経済対策本部と経済対策閣僚会議の合同会合を開き、緊急経済対策を決定したことを報じた。
緊急経済対策の概要
@金融再生と産業再生の一体解決
※不良債権の最終処理に年限設定..........................................目玉の一つ。
・主要行の「破綻懸念先」「破綻先」などの不良債権が対象.................分類が重要になる。
・既存案件は2年、新規案件は3年以内に最終処理.............................最低2〜3年先送りできるということ。
・実績を毎期公表し、金融庁が進ちょく状況を点検.................................金融庁の手に負えるかな?
※債権放棄の円滑化.......................................................................................債権放棄のみが一人歩きせねばよいが。
・金融機関と取引企業の調整円滑化へ官民でガイドラインを策定.......どんなガイドラインができるのか。
・産業再生法の認定を条件に、政策融資・税制面で支援......................いずれの支援も税金が投入される。
・預金保険機構など公的金融機関の債権放棄も容認...........................不足分は税金が投入される。
※銀行の株式保有額を自己資本の範囲などに規制.................................これ自体は株式市場への下げ要因。
・基準を超える株式は一定期間内に処分................................................
同上。
※「銀行保有株式取得機構」の創設......................................................目玉の一つ。
・買取資金に預金保険機構の活用など公的支援を検討.......................内容に未定の部分が多過ぎる。
・対象銘柄は株価指数の構成を考慮........................................................意味なし。
・一定期間後、投資信託などの形で投資家に売却................................投資信託にはウンザリだ。
A証券市場活性化策
※金庫株の解禁、株式投資単位の引き下げ..............................................一定以上の効果は期待できない。
※現物出資型の上場投資信託(ETF)の導入............................................効果に疑問。
B都市再生・土地流動化
※首相を本部長とする「都市再生本部」を設置............................................単なる組織の”設置”である。
・環境、防災、交通基盤に重点を置いたプロジェクトの推進...................目先を変えた公共投資である。
※不動産の証券化の推進、都市計画の柔軟な運用.................................どれだけ効果があるか疑問。
※PFIの積極活用、公務員宿舎跡地の再開発...........................................同上。
C雇用の創出とセーフティーネット
※中高年層の失業者を雇用した企業への奨励金の延長.........................効果に疑問。
※IT,医療、介護など新規分野で規制緩和.................................................出来ることがあったならさっさとやれ。
D税制改正
※証券、土地関連税制の早急な検討...........................................................今頃になって検討始めるな。
この緊急経済対策の目玉は二つである。
(1)銀行に不良債権の最終処理を促す。
目的は、銀行のバランスシートから不良債権を消し、経営不振企業との関係を整理させることである。バランスシートから不良債権を消すためには、@債権放棄して企業に再生を迫るか、A法的整理に持ち込むかの選択しかない。相手企業が「破綻懸念先」あるいは「破綻先」であれば、主要銀行に関しては、既に債権の7割以上は引当金の計上を行っているはずである。今残りの3割未満を損失計上したところで、大した影響はないはずである。問題は、なぜ今まで銀行が直接償却をためらっていたかである。
2000年9月末時点で、主要銀行の「破綻懸念先」「破綻先」債権は、合わせて12兆7千億円に上っている。これらを2年間で直接償却すれば、当然のことながら、主要銀行の決算の大赤字、失業者の増加、放出された担保不動産による土地価格の更なる低下、景気のさらなる悪化、デフレのさらなる深化、それらに伴う新規の「破綻懸念先」「破綻先」債権の発生など、政府による生半可な支援ではとても支え切れない事態となることが予想される。
にもかかわらず、今回の緊急経済対策の中に、その受け皿が用意されているとは思えない。堺屋太一・元経済企画庁長官は、日本の不良債権問題について「担保不動産売却による最終処理は、土地問題に行き着く」と語っている。土地資本主義によって高度経済成長を成し遂げてきた日本経済にとっては、今はその駆け上がってきた坂を、転がり落ちている状況であり、それにさらに暴力組織が絡むケースもある土地問題は、日本経済にとって解決したくとも解決できぬ問題であったはずだ。この問題に対しての受け皿なくして、不良債権の最終処理はあり得ない。
結論としては、今回の緊急経済対策も、2〜3年の時間稼ぎの思惑が強いのではという印象を持つ。
(2)「銀行保有株取得機構」の創設
目的は、金融機関の経営が株価動向に左右され、金融システムが動揺する現状から脱却するため、銀行の株式保有額を自己資本の範囲内に制限し、この売り圧力を吸収するために銀行の保有株を買い上げる機構を創設するものである。但し、細かな部分が未決定となっているため、内容を云々することは難しい。たとえば、持ち合い株であるから相手の企業は銀行の株を持っているわけだが、銀行がその企業の株を「機構」に売却してしまったら、企業側も銀行の株式を保有する意味がないので売却する必要がある。しかし「機構」は買取をしないので、市場で売却をしなければならないが、当然のことながら株価は下がってしまうだろう。銀行が時価で「機構」に買い取ってもらうのと比べて、企業側は不利をこうむることになる。これはアンフェアではないか?他にもいろいろ問題がありそうで、今後すんなり細部まで決着がつくとは思えない。
いずれにせよ、結果として株価が下がった時に影響が少ないということは、逆に上がった時も影響が少ないことを意味する。これもまた銀行にとってみたら、困ったことではないのか?
(2001/04/07)
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