the NIKKEI-watcher


Japan Problem/「行政」の責任を問う
「行政」、それは時として、「うそ」と「怠慢」と「傲慢」と「無責任」で塗り固められることがある。そして、塗り固められた「行政」は、その自らの腐敗によって自壊作用を起こすまで続くのが常であるから、いつしか、「うそ」と「怠慢」と「傲慢」と「無責任」で塗り固められた「行政」が、社会の中のそこかしこで見られるようになる。”悪貨は良貨を駆逐する”という経済原則にのっとり、悪い「行政」は良い「行政」に悪影響を及ぼし、やがて、「うそ」と「怠慢」と「傲慢」と「無責任」が、日本の「行政」を象徴するキーワードとなった。



「責任のとり方」

責任のとれない人間は、責任ある地位に就くべきではない




2001年12月21日農水省内で、第3回BSE(狂牛病)問題に関する調査検討委員会が開かれた。
厚生労働省の「牛海綿状脳症(BSE)関係」ホームページ(Q&Aなど)が、同委員会の議事録等を掲載している。


BSE問題に関する調査検討委員会開催要領
第1 趣旨
BSEに関するこれまでの行政対応上の問題を検証し、今後の畜産・食品衛生行政のあり方について調査検討を行なうため、厚生労働大臣及び農林水産大臣の私的諮問機関として、「BSE問題に関する調査検討委員会」を開催することとする。

第2 検討事項
1 BSEに関するこれまでの行政対応上の問題の検証について
2 今後の畜産・食品衛生行政のあり方について

第3 構成
委員会は、別紙に掲げる者をもって構成する。

             <別紙>
   高橋正郎   日本大学生物資源科学部教授  【委員長】
   岩淵勝好   産経新聞論説委員
   小野寺節   東京大学大学院農学生命科学研究科教授
   加倉井弘   経済評論家
   砂田登志子  食生活・健康ジャーナリスト
   竹田美文   実践女子大学生活科学部教授
   日和佐信子  全国消費者団体連絡会事務局長
   藤田陽偉   国際獣疫事務局(OIE)アジア太平洋地域代表
   山内一也   (財)日本生物化学研究所理事
   和田正江   主婦連合会会長

第4 委員長   省略
第5 運営     省略
第6 その他   省略


12月22日の日経新聞朝刊35面が、同委員会の検討内容に関して、次のように報道した。
21日に開かれた狂牛病問題の行政の対応を検討する「BSE問題に関する調査検討委員会」で、欧州連合(EU)の委員会が昨年4月の最終報告書案で、1990年代前半以降、日本国内で感染の危険性が増大し続けている可能性を指摘していたことが、農水省が提出した資料によって判明した。

同報告書案は、
@日本が1990年代に入り、英国やイタリアやデンマークから輸入した肉骨粉について、「非常に高度の感染リスクがあった」と指摘。過熱処理されていたとしても、狂牛病の感染リスクが中度レベルまでしか下がらない旨を強調していた。
A農水省が96年4月以降、牛に対して肉骨粉を与えないよう行政指導に乗り出しているが、当時、一部の生産者が輸入肉骨粉を牛用飼料として使っていたとの情報があったことを列記。
B行政指導後も一部の飼料工場で牛用と、肉骨粉の使用が認められた豚、鶏用との製造ラインが重なっていた。
こうした点を挙げ、「狂牛病の病原体が輸入肉骨粉に混じって日本に入り込み、93〜94年以降、感染の危険性は増大し続けている」と指摘し、日本の汚染度について、四段階評価で上から2番目という発生国と同レベル扱いの評価を下していた。

この最終報告書案を巡って、日本が発生国並の危険評価を受けていることを事前に知った農水省が、「評価方法などに問題がある」として、畜産部長名でEU側に採択の見送りを迫るなど3回にわたって抗議。その結果、EU側が7月に採択した最終的見解に盛り込まれなかった経緯が、すでに明らかになっている。

また同報告書案は、
C「症状がなくても感染リスクのある廃用牛のサンプル調査を行なうことが、もっとも効果的な手段」として、国内牛に対する検査態勢の強化を求めていた。
ということであるが、実際に農水省が本格実施に移したのは、昨年9月に国内初の感染牛が見つかってからであり、ここにまた行政の「怠慢」と「無責任」そして「傲慢」さが浮き彫りとなった。

高橋正郎委員長は、当時の詳しい経緯説明を求めたが、出席した農水省の担当者は「省内の関係部署と関係省庁が調整した」などの曖昧な答えに終始。高橋委員長が「課長レベルか」と問いただしても、「省としての意見」と具体的な説明を拒んだ』という。

委員との質疑の中では、次のような意見・質問もあったという。
○「BSE物質を含む可能性のある組織が人や動物の食物連鎖に入らないようにする」と狂牛病の安全対策を強く求めた世界保健機構(WHO)勧告の最終報告書は、1996年5月に農水省に送付されているが、(資材審議会飼料部会では)その後9月まで議論されておらず、9月の部会でも最終報告書が提出されていない。政策の決定が個人の判断で行なわれているのか、議論を行なった上で決めたのか究明すべき。これについては、厚生省も関与しているが、農水省が取り上げなかったことについて、厚生省は何も言わなかったのか。縦割り行政はチェック機能が効くという面もあるが、この件については、厚生省はチェック機能を果たしていなかったのか。

○これまで90年、96年、98〜2001年と3つの時期がポイントであったと思うが、それぞれどのような状況で、どの部署がどのような判断で、何を決めたか、決めなかったかがわからない。この時期に担当していた局長、課長、課長補佐に、できれば係長も含めて、個別に
@その時どうすべきであったのか
Aなぜできなかったのか
Bできなかった原因は何か
Cその原因を取り除いて今後再発を防ぐために、解決すべき問題点とその方法は何か
D責任の所在と程度
E農水省と厚生省の連携はどうであったか(事実)、どう思ったか(感想)
について、農水省、厚生省それぞれで調べて提出していただきたい。固有名詞を出す必要はなく匿名でかまわない。

第4回委員会は、1月17日に開催される予定。当時のやりとりがどこまで明らかになるかが、今後の焦点となる。


12月25日の日経新聞夕刊1面が、農水省の人事異動を報じた。
武部勤農相は25日の閣議後の記者会見で、熊沢英昭農水事務次官が退任し、後任に渡辺好明水産庁長官を充てる人事を発表した。28日の閣議で正式決定し、来年1月8日に発令する。熊沢次官は狂牛病への対応を巡り、国会などで責任を追及されており、事実上の引責人事とみられる。永村武美畜産部長も同時に退任する。』さらに武部農相は、『BSE(狂牛病)問題は、農水省全体として責任を負うもので、特定の個人の責任ではない」と述べた』という。

なんなんだ、この男は。上述の第3回BSE調査検討委員会の質疑においても、高橋委員長の経緯説明に対して、農水省の担当者は「省としての意見」と答えている。おそらく農水省内で、責任問題に関しては、”特定の個人の責任にはせず、農水省全体として責任を負う形に統一しよう”という意見統一ができていると推測される。ものごとを曖昧にすることにより、追求の手を振り切り、なんとか武部農相の辞任という最悪事態に追い込まれないように逃げ切ろうとの思惑であろう。
責任ある立場にある大臣が、責任を省全体に押し付けるという精神は、最後の最後までそも「無責任」さを表したものと言えよう。


翌26日の同紙朝刊5面に、上記人事異動に関する解説記事が掲載された。
農水省が熊沢事務次官の退任を決めたのは、狂牛病問題にケジメをつけるためだ。同氏は野党などから畜産局長時代の肉骨粉に対する規制が不十分だったと批判されており、次官を続ければ2002年の通常国会でも責任追及が続くことは必至の情勢。2001年1月の就任から1年という節目で退任する形をとった。
熊沢次官の後任は、竹中美晴農水審議官との見方が多かったが、他省の現職次官より若いことや、熊沢次官の畜産局長時代に部下の審議官だったこともあって、次官就任は困難だと判断された模様だ。熊沢次官以外の狂牛病担当幹部にも一定の”処分”をした形。国内初の感染牛を確認したときに「牛は焼却処分した」と誤って発表した永村畜産部長は退任し、上司の小林芳雄生産局長も総括審議官への格下げとなる。


同日の同紙24面には、「狂牛病で酪農家苦境」と題して、次のような内容の記事が載った。
狂牛病の確認された3頭の牛がすべて乳廃牛だったことから乳廃牛価格が暴落、酪農家は副収入の道を断たれたばかりか、売れない乳廃牛を手元に抱え続けなければならない状況。
「処理場の受け入れ拒否は打撃だが、かといって出荷して陽性認定された場合のことを考えると・・・」−−中央酪農会議の伊佐地誠専務が身動きのとれない酪農家の窮状を代弁する。
乳廃牛
搾乳できなくなったメスの乳牛。通常は3〜4回出産し、5才前後になると体力の低下とともに搾乳量は減る。生乳中の栄養分も少なくなり、乳廃牛として食用に回る。

そして翌27日の日経新聞朝刊31面が、武部農相の発言を報道した。
『武部農相は26日、北海道中標津町で酪農関係者らと狂牛病についての意見交換会を開き、約100人の参加者を前に「全省挙げて感染源の解明に力を注いでいる」とした上で、「原因解明は酪農家のみなさんにとってそんなに大きな問題だろうか」と発言。参加者から「1日も早い感染原因の究明を願う酪農家の立場からすると残念な発言」と不満の声が上がっている。また農相は「今すぐにでも感染原因を見つけたい」と強調する一方で、「英国では10年たっても原因の解明はできていない。感染原因の解明と安全な食肉が市場に出るかは別問題だ」と述べた。』


翌28日の同紙朝刊3面が、27日の武部農相の釈明発言を伝えた。
武部農相は27日、国内2頭目の狂牛病が発生した猿払村で、酪農家らとの意見交換会を開いた。冒頭、26日の中標津町の意見交換会で「(狂牛病の)原因解明は酪農家のみなさんにとってそんなに大きな問題だろうか」と発言したことについて、「発言内容が曲解された。感染原因の究明には全力をつくしているが、半年や1年で判明するかどうか断言できない。現在は安全な牛肉しか出回っていないのだから、感染源究明と安全性確保の話は分けて考えるべきという意味だ」と説明した。


同紙朝刊2面には、早くも野党からの武部農相罷免要求が出たことを伝える次の記事が掲載された。
社民党の福島瑞穂幹事長は27日の記者会見で、武部農相の「原因解明は酪農家のみなさんにとってそんなに大きな問題だろうか」という発言は「無責任極まりなく、あきれ返る。生産者、消費者、流通業者の牛肉に対する不安が全然解消されない中で暴言をはくことは信じられない」と述べ、農相の辞任を要求する考えを示した。
共産党の筆坂秀世政策委員長も、小泉首相が農相を罷免すべきだとする談話を発表した。



同日同紙夕刊2面には、『民主、自由、共産、社民の野党4党は28日午前の国会対策委員長会談で、武部農相の罷免を小泉首相に要求することを決めた。同日午後、菅直人民主党幹事長ら4党の代表が首相官邸を訪ね、上野公成官房副長官に申し入れた。国対委員長会談では農相の狂牛病問題での発言に対し「拙劣な言動で酪農家や消費者は耐えられない」と批判が噴出した』との記事が報道された。


同記事に並んで、官邸側の反応を伝える次の記事も掲載された。
「来年(2002年)が改革断行内閣の本番なので気を緩めないようにしてほしい。国会休会中だが、発言は慎重にしてください」−−。小泉首相は28日の閣議後の閣僚懇談会で、言動に注意するようにクギを刺した。特定の閣僚を名指ししてはいないが、狂牛病問題に関連し「感染源解明は大きな問題か」と発言した「武部農相の方をちらりと見た」(福田官房長官)という。
農相は閣僚懇談会で「感染源の究明には全力を挙げているが、突き詰めるのは難しい。市場に出回っている牛肉の安全性は(全頭検査で)確保されているという問題提起だった」と釈明。閣議後の記者会見でも「
発言の揚げ足を取られないように、言葉遣いに気をつけようと心に誓った」と語った。

これで終わりなんだ。政府内における問題対応は。野党4党が武部農相の罷免を要求している事態に、小泉首相がやったことはなんだと、「武部農相の方をちらりと見た」だと。それで終わりか?「狂牛病の原因解明が大きな問題ではない」と喋った閣僚に対してのあなたの反応は「ちらりと見る」だけですか、小泉首相?なるほど、あなたにとっても、狂牛病の原因解明など、どうでもいい問題というわけだ。それとも、これもまたあなたの国民に繰り出すお得意の「痛み」の一種なんでしょうか、小泉さん?


さらに翌29日の同紙朝刊30面は、武部農相が28日、国内3頭目の狂牛病に感染した乳牛が飼育されていた群馬県宮城村を視察した様子を報道した。
武部農相は感染した牛を飼っていた酪農家を訪ね、「農水省の危機管理意識の甘さがこうした事態を招いてしまった。誰が悪いということはなくて、農水省全体が責任を感じ、二度とこういうことが起こらないようにしたい」と話したという。酪農家は「(狂牛病の)発生農家への対応が全く見えてこない」]と指摘、支援を強く求めたという。地元の酪農家や村関係者らとの意見交換会で、農相は「万が一(新たな感染牛が見つかる)次の対象になっても、これだけのことをしてくれるんだということをしたい」と感染牛を飼育した酪農家の再建支援策を充実させる考えを示した。

けっこうですね、酪農家の皆さんも。なんだかんだ言っても、国がいろいろ心配してくれるじゃないですか。楽しみですね。武部農相が、「これだけのことをしてくれるんだということをしたい」とまで言ってくれてますよ。どんだけのことをしてくれるんですかね?武部農相も、大盤振る舞いに出ましたね。別に彼のフトコロが痛むわけではないですからね。出所は税金でしょう。「痛み」を蒙るのは、我われ国民ですからね。この程度は言わしてくださいよ。


同紙2面には、『民主党の菅幹事長は28日の記者会見で、武部農相への対応について「次の国会でも審議に出てくるようなら、不信任案提出も視野に検討するよう国会対策委員会にもお願いしている」と語った』と報道された。

一方、与党側の対応も報道された。『与党3党の国会対策委員長は28日、国会内で会談し、2002年の通常国会召集前、1月7日以降に狂牛病と不審船問題を議論するため委員会を開くことを決めた。年明けに具体的な日程などを詰める。武部農相が狂牛病の原因解明について「そんなに大きな問題だろうか」などと発言したとされる問題への対応も協議。与党を代表して、自民党の大島理森国対委員長が農相に電話をかけ「誤解を与えるような発言は慎むように」と注意した』という。


「狂牛病問題」に関しては、日経新聞は珍しく終始、行政の「怠慢」と「無責任」を激しく追求していた。暗かった2001年の年越しにあたって、30日の同紙朝刊1面”春秋”が、次のように語っていたのが印象的であった。
万事にけじめも区切りもつかないまま、21世紀最初の歳末は過ぎようとしている。小泉改革の核心は先送りされ、対テロ作戦も決着していない。狂牛病問題で農水省の熊沢事務次官の辞任が決まったが、行政は失策を認めていない。沈黙の辞任で責任の所在はあいまいに。


年改まって2002年1月10日の日経新聞夕刊2面が、次の記事を伝えた。
農水省の須賀田菊仁生産局長は10日の衆院農林水産委員会で、8日に狂牛病問題で事実上の引責辞任をした熊沢前事務次官に、次官退任者の規定通りに約8,874万円の退職金を払うことを明らかにした。民主党の筒井信隆議員への答弁。
筒井議員は委員会で「前次官の退任は実質的な引責辞任だ。退職金は減額すべきだというのが国民感情ではないか」と指摘。これに対し、武部農相は「
(前次官の退任は)農水省の抱える課題に一定の区切りがついたことに伴う定期異動だ」と述べ、引責辞任との見方を否定した。熊沢前次官は畜産局長だった1996年4月、狂牛病の感染源とされる肉骨粉の牛への使用禁止を行政指導にとどめたことなどが批判されている。


武部勤農林水産大臣 殿


あなたは、本日の衆院農林水産委員会において、熊沢前事務次官の退任は農水省の抱える課題に一定の区切りがついたことに伴う定期異動だ」と発言されたそうだ。ということであれば、すでに感染牛が3頭も見つかり、生産者、消費者、流通業者に不安と戸惑いとなにより現実に多大なる損失を引き起こし、多額の国民の血税を後始末に投入せざるを得ない状況を招いたこの「狂牛病問題」に関して、未だ農水省内において誰一人として責任をとってないという事実に思い至るべきだ。

あなたは昨年12月26日、北海道の酪農関係者の前で、狂牛病の「原因解明は酪農家のみなさんにとってそんなに大きな問題だろうか」と語った。これが、狂牛病対策に取り組むべき農水省の責任者の発言であろうか?あなたはさらに翌27日には、「発言内容が曲解された」、28日には閣議後の記者会見で、「発言の揚げ足をとられないように、言葉づかいに気をつけようと心に誓った」と語ったそうだ。
28日に群馬県宮城村を訪れた際は、「誰が悪いということはなくて、農水省全体が責任を感じ、二度とこういうことが起こらないようにしたい」とも語った。

あなたは農水省を統括する農林水産大臣ではないんですか?あなたは、オレは大臣なんだ、と大臣風を吹かして偉そうにすることはないんですか?責任ある地位というものには、当然「責任」の重圧がついてくるものだということを、あなたはご存知ないんですか?それのみならず、あなたは、自分の発言を棚に上げて、曲解だの揚げ足とりだの聞く側に責任を押し付けようとしましたね。その態度は、とても責任ある農林水産大臣の地位に相応しいものとは思えない。あなたの大臣としての資質には問題がある。

あなたは、昨年4月26日、小泉内閣の発足とともに農林水産大臣に就任された。
その後6月に、狂牛病発生の危険度を警告しようとした欧州連合(EU)の評価を拒否するという問題が発生した。あなたは本日の農水委員会で、「評価の内容を詳しく知らなかった」と発言したそうだ。あなたは、すべて自分の責任を他に押し付けて回避しようとしている。狂牛病対策は、これから本番を迎えるといっても過言でない。数年先には、わが国初の「人」の狂牛病が発生する危険性が高い。
そのような時に、あなたのように責任ある立場にありながら責任を回避し他に押し付ける人物が農林水産大臣の地位にあることは、国民にとって耐え難いものがある。あなたの資質は、大臣の地位に相応しくない。
あなたは即刻農林水産大臣の地位から身を引くべきだ。

責任のとれない人間は、責任ある地位に着くべきではない。
(2002/01/10)


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